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キズとカタチの総合医

乳房再建を考える=桜井裕之・東京女子医科大学形成外科教授

 先日、「20年前に乳がんで失った胸を再建してほしい」という50代後半の女性患者が来院しました。手術後、大好きだった温泉旅行も諦めていたが、「友人の話を聞いて自分も乳房再建手術を受けたい」と思うようになったとのことです。

     乳房再建には、インプラントを使ったものがあります。インプラントは形態を再現するために体内に埋め込むシリコーン製のバッグで、2013年7月から乳房再建手術に公的医療保険が適用されています。以前からインプラントによる乳房再建は行われていましたが、自費治療であったため、高額な費用負担を患者に強いるものでした。

     この保険適用以来、「カタチの総合医」でもある形成外科医の手術として、乳房再建症例が急激に増えました。5年前の保険適用は、乳がん患者が、がん治療のために失われる体のカタチと、女性として求める生き方とを考えるきっかけにもなりました。しかし、インプラントは、再現される乳房の形に限界があります。例えば、大きな下垂した乳房の形態や、運動や姿勢の変化に伴う乳房の自然な動きは再現できません。

     一方、自分の組織を移植(自家組織移植)することで乳房の形を再現する手術方法もあり、ずっと前から保険が適用されていました。移植組織を取ってくる場所は、主におなかや背中など、皮膚や脂肪が余っている部位が選ばれます。しかしこの方法は、がんを切除する胸以外の場所にも大きな傷ができたり、手術時間が長くなってしまったりする理由で、希望される患者は限られていました。5年前から急激に増えた乳房再建の患者のほとんどはインプラントを希望していましたが、ここ数年でその傾向も変わってきています。

     来院した患者も「自分のおなかの組織を使って再建してほしい」と希望されました。インプラントと自家組織移植のどちらも長所と短所があり、患者の年齢や体形、そして日常生活で何を求めるかによって適した手術方法が異なります。これから乳がんの治療を受けようとする患者に、今までに経験された多くの乳房再建患者の声が届くようになり、自分にあった再建方法を自分で考える患者が増えてきています。

     現代社会で日本人女性が最も多くかかるがんは乳がんです。手術で失われた乳房のカタチを再現することは、女性としての自信を取り戻し、以前と同じ日常生活に戻る上で重要だと考える患者は多いのです。3回にわたり、乳房再建にまつわるお話をさせていただきます。=次回は8月12日掲載

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