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 【ワシントン会川晴之、ソウル渋江千春】6月12日にシンガポールで開かれたトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談から1カ月。共同声明には「完全な非核化に向けて努力」との文言が入ったが、その後は進展が見られず、非核化プロセスの最初の一歩である核兵器や施設に関する申告のめども立っていない。

     ポンペオ米国務長官が訪朝した6~7日の米朝協議の直後、北朝鮮外務省は報道官談話で核・ミサイルなど大量破壊兵器計画に関する申告や検証の要求に対し、強く反発した。

     非核化に向けた作業を始めるには申告が不可欠だが、北朝鮮は1985年に核拡散防止条約(NPT)に加入した際も、条約で義務付けられている半年以内の申告書提出を6年以上も遅らせ、その内容も極めて不完全だった経緯がある。

     申告が当面の最重要課題となるのは、北朝鮮の核施設の多くが国際原子力機関(IAEA)などの査察を受けておらず、「秘密のベール」に包まれているためだ。北朝鮮は北西部寧辺(ニョンビョン)にある核施設から、2009年春にIAEA査察官を追放して以後、ウラン濃縮施設や軽水炉などの新たな施設の整備を進めた。

     さらに米国などの専門家は、寧辺以外の場所に「秘密濃縮施設」が存在すると指摘。米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)のオルブライト所長は、脱北者や米政府当局の情報などをもとに「カンソン」と呼ばれる場所に、寧辺の施設の2倍の能力を持つ濃縮施設が存在すると分析、核兵器用の高濃縮ウランを製造していると見ている。

     また、寧辺の原子炉に使う核燃料製造施設も、09年以後は不明の状態にある。寧辺にはかつて、5メガワット黒鉛減速炉用の核燃料を製造する施設があったが、10年秋、その建物が濃縮施設に置き換えられたことが確認された。原子炉には新たな核燃料が供給されており、ウラン鉱山や精錬所がある南部の平山(ピョンサン)など複数の施設での製造が有力視されている。

     北朝鮮が申告にいつ応じるのかが当面の焦点だが、ポンペオ氏は9日、アフガニスタンでの演説で「北朝鮮の非核化は何十年もかかる取り組みだ」と述べ、「長期化もやむなし」とも取れる姿勢を見せている。

    日本、戦略練り直し迫られ

     非核化を巡る米朝協議が難航していることを受け、米朝関係の好転に合わせて拉致問題の解決を目指してきた日本政府は戦略の練り直しを迫られている。

     「金正恩朝鮮労働党委員長には指導力がある」。安倍晋三首相は6月18日の参院決算委員会でこう金委員長を持ち上げ、日朝首脳会談の実現を呼びかけた。「相互不信という殻を破って一歩踏み出したい」とも語り、信頼醸成を進める考えも示した。

     日本政府は当初、米朝交渉が進展すれば、北朝鮮が拉致問題への態度を変えうると期待。加えて、日朝平壌宣言(2002年)に基づく国交正常化後の経済協力をちらつかせ、正常化の条件として拉致問題解決を迫る算段だった。

     だが、北朝鮮の対応に変化はなく、国営ラジオ「平壌放送」は6月下旬に「ありもしない拉致問題をわめき立てている」と批判。外務省幹部は「北朝鮮は米朝交渉を優先しており、まだ拉致問題への関心が高まる段階にはない」と指摘するが、その米朝交渉の進展に不透明感が漂う。

     日本政府は、金委員長が出席する可能性がある9月のロシア・ウラジオストクでの国際フォーラム、米国での国連総会に合わせた首脳会談を探るが、実現は見通せない状況だ。

     政府はあくまで拉致問題の解決を優先する構えだが、与党内からは「国交正常化の後、拉致問題解決を探る選択肢もある」との声も上がり始めている。【小山由宇】

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