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西日本豪雨

広域被災 砂防ダム整備地域も

豪雨が降った後の広島県呉市付近の衛星画像(9日午前)。茶色くにごった黒瀬川(右)から大量の土砂が瀬戸内海に流出している様子が分かる=米国地質調査所の提供データを基に作野裕司・広島大准教授が作成
甚大な被害が出た梅河団地。土石流で住宅が流され、住んでいた男性と妻は連絡がとれなくなっている=広島市安芸区で2018年7月12日、大西岳彦撮影
被災した男性宅
7月6日の広島市安芸区・梅河団地を巡る経過

 広島市安芸区矢野東地区では梅河(うめごう)団地を中心に、12人の死者・安否不明者が出た。20年以上前からある、山間部に造成された団地で暮らす男性(69)と妻(66)の自宅は今月6日夜、土石流の直撃を受け、跡形もなくなった。夫妻とは今も連絡が取れない。

 団地の一部は、2014年8月に広島市安佐南区などで77人の犠牲者を出した大規模な土砂災害を受け、生命に著しい危害が及ぶ恐れがある「土砂災害特別警戒区域」に指定されることが決まっていた。だが、その教訓は十分に伝わらず、そして間に合わず、犠牲は防げなかった。

 広島県は今年5月17日、ホームページ(HP)で区域を公表。8月にも危険性などを周知する地元説明会を開き、その後指定する予定だった。その間隙(かんげき)を突くように災害は起きた。

 4年前を教訓に改正された土砂災害防止法は、指定前でも調査が終わった段階での公表を義務付けた。説明会直前の土石流は、くしくも公表した警戒区域の図で示していたものとほぼ同じ方向で発生した。

 被害が特に甚大だった広島、岡山、愛媛の被災地の現状と浮かんだ課題を緊急に報告する。【畠山哲郎、林由紀子】

周知遅れた危険性 「土砂災害特別警戒地域」指定直前

 広島市安芸区矢野東の梅河(うめごう)団地は、被災から6日が経過したが、12日もがれきを撤去する重機の低音が一日中響きわたった。難を逃れた住民の多くは避難所に身を寄せ、団地特有の整理された街路からは人影がほとんど消えた。家屋跡には流されてきた岩や流木が散乱し、流出した家財や住民のアルバムなども泥をかぶったままになっていた。

 「危険情報が伝わっていれば……」。団地に住む掛橋賢二さん(74)は、行政がもう一歩踏み込んだ対応をしていたらと感じる。自宅は難を逃れたが、かつて勤めた自動車工場の同僚の男性(69)宅は団地内の高台に位置していた。6日夜の土石流の威力はすさまじく、家ごと流された。男性とその妻(66)の行方は分かっていない。

 男性宅はリスクが極めて高い「土砂災害特別警戒区域」への指定が決まっていた。今年5月、広島県がホームページ(HP)で区域を公表。8月にも地元説明会を開いたうえで、指定される予定だった。

 男性が区域指定を知っていたか定かではない。しかし、今年2月には、自宅よりさらに100メートルほど上った場所に、森林を維持しながら土砂崩れを防ぐ治山ダムができ、男性は「安心だ」と話していたという。掛橋さんは「区域指定の説明を受けていれば、結果は違ったかもしれない。もはや後の祭りだ」と嘆く。

 77人の犠牲者を出した4年前の災害では、甚大な被害の背景として、区域指定が進まず、土砂災害の危険性が住民に十分伝わっていなかったことが指摘された。そのために、指定前でも調査が終わった段階での公表が義務付けられた。特別警戒区域の指定は今年3月時点で、全国の約37万9000カ所にも上る。

 今回、県HPで区域は公表していたものの、トップページからは容易に情報にたどりつけない。「早めのお知らせを心がけ、頑張っていたのに」。県の古川信博・土砂法指定推進担当課長は肩を落とした。

 2014年の災害では、未明の大雨が避難勧告の判断を難しくし、実際の発令は災害発生後の午前4時過ぎとなったことも問題視された。15年1月、専門家らによる市の検証部会は、勧告のタイミングを「やむを得なかったとしても適切であったとは言えない」と総括しつつ、適切な発令時期は示せなかった。

 今回も同じ夜間帯の発生だった。団地のある矢野地区から消防に災害発生の通報が相次いだのは午後6時50分ごろ。男性の隣家の住人は「被害に遭ったのは午後8時ごろだった」と証言する。

 市は安芸区全域に土砂災害の「避難準備・高齢者等避難開始」情報を午後2時18分に出し、矢野地区に避難勧告が出たのは午後6時5分。避難指示は午後8時17分だったが、男性の住宅は既に土石流に襲われていた可能性がある。

 11日、ヘリで上空から矢野地区を視察した海堀正博・広島大教授(砂防学)は、降り始めからの雨量が14年災害時の2倍以上に達したことに着目。「ハザードマップも砂防ダムも一定条件下で作られている。想定を超える場合もあることを理解し、その時どう行動するかを考えておくべきだ」と指摘する。

 こうした場合「砂防ダムだけで命は守れない。ダムを過信せず、早めに避難すべきだ」という海堀教授。今回、指定寸前に住民が巻き込まれた事実に「頭の片隅にでも情報が入っていれば、防災上の行動は変わってくるはずだ」と残念がった。【畠山哲郎、渡辺諒】

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