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創作の原点

演出家・宮田慶子さん 「祭りを仕切る」楽しさ

宮田慶子さん=東京都渋谷区で、玉城達郎撮影

 2010年から8年間務めた新国立劇場演劇部門の芸術監督を8月末で退く、演出家の宮田慶子さん(61)。所属する劇団青年座の作品以外にも、翻訳劇やミュージカルまで、幅広い演出経験を持つ。その原点には、学生時代に仲間と共に舞台を作り上げた充実感や達成感があった。

     元々シェークスピアやテネシー・ウィリアムズの作品が好きな文学少女だった。「中学で演劇部に入って、初めは先輩たちにくっついてシェークスピアを読んでみる程度でした。高校からは演出一本。自分が本で読んでいた世界を同級生の俳優が演じて、裁縫に興味ある人が衣装を縫ってくれて、装置や照明をお願いして舞台が仕上がる。演出はお祭りを仕切っているような楽しさがありました」

     大学でも演劇部に入ったが「本気で芝居がやりたい」と中退。芝居を片っ端から見て選んだのが劇団青年座だった。「決め手は、若手によるスタジオ公演をまとめて見たこと。新劇の劇団なのに、若手が破天荒な芝居を楽しそうに作っている。きっといい劇団に違いないと考えました」

     1980年に入団した当時の青年座のスタッフは男社会。女性は宮田さんだけだった。「控室も男性用しかないから、トイレで作業着に着替えて、先輩のお茶をいれるところから毎日が始まりました」。最初の3、4カ月はひたすら稽古(けいこ)場の掃除をする毎日を送った。初めて青年座で演出を手がけたのは、特別養護老人ホームが舞台のスタジオ公演「ひといきといき」(83年)。後にも先にも唯一、自ら脚本を手がけた作品になった。「誰かに本を借りるより、潔く自分だけのフィールドでどう評価されるのか、試したかった」と振り返った。

     成果が認められ、準劇団員から正劇団員に昇格。本公演の演出家デビューは85年の「ブンナよ、木からおりてこい」。トノサマガエルの子「ブンナ」を通し、輪廻(りんね)転生を描いた青年座の代表作だ。初演の演出家が退団し、宮田さんに白羽の矢が立った。新たに脚本を書き下ろしたのは原作者で作家の水上勉さん。稽古終盤、演出をめぐり水上さんと口論になった。「先生が気に入らない演出があったのですが、私は『こう思います』と譲らない。結局先生が引き下がってくれましたが、怖いもの知らずでしたね」。支えになったのは、俳優陣が自分の演出を理解してくれたことだった。「今でも当時の仲間は『宮田さんを支持していたよ』と言ってくれます。現場と一緒に戦う姿勢を学びました」

     「ブンナ-」は、先の仕事につながる縁ももたらした。のちに数々の作品でタッグを組んだ劇作家、マキノノゾミさんとの出会いもその一つだ。「京都を中心に活動していたプロデューサーが『ブンナ-』を見に来てくれて、京都での別の芝居の演出につながった。その公演がもとでマキノさんと知り合えた。『ブンナ-』は大きなきっかけとなる作品でした」

     新国立劇場での芸術監督最後の作品となる「消えていくなら朝」(同劇場で29日まで)は、5年ぶりに実家に帰省した劇作家の定男と家族の物語だ。「定男が家族に突きつけられる『演劇を作る意味ってなんだ』という問いには、私自身ずっと直面してきて、今もちゃんとした答えが返せない」と明かす。

     だが、在任中、そんな問いに一つの答えが見えたことがあった。東日本大震災の直後に上演した「ゴドーを待ちながら」。いつ訪れるかわからない「ゴドー」を待ち続ける2人の男を描いた不条理劇だ。「まだ電力制限もある中で、演劇に飢えた多くのお客さまが来てくださって、劇に共感してくれた。その時に舞台の力ってすごいと、どんな状況でも人を引きつける名作の底力を感じました」

     そんな思いを次世代に引き継ぐ活動も始めている。16年には俳優を育成する新国立劇場の演劇研修所所長に就任した。「いずれは演出家の育成もやってみたいですね。私はやみくもにやってきたから、もう少しシステマチックにやってみたいと思います」【小玉沙織】=次回は8月11日掲載


     ◆略年譜

    みやた・けいこ

    1957年 東京都生まれ

      80年 劇団青年座に入団

      83年 「ひといきといき」の作・演出でデビュー

      85年 「ブンナよ、木からおりてこい」を演出する

      94年 「MOTHER-君わらひたまふことなかれ」で第29回紀伊国屋演劇賞個人賞受賞

      98年 「ディア・ライアー」で芸術選奨文部大臣新人賞受賞

    2001年 「赤シャツ」「悔しい女」「サラ」で第43回毎日芸術賞千田是也賞、第9回読売演劇大賞最優秀演出家賞受賞

      10年 新国立劇場演劇芸術監督に就任

      16年 新国立劇場演劇研修所所長に就任

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