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通常国会が事実上閉会 骨太の議論は乏しかった

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 安倍晋三首相が「働き方改革国会」と銘打って臨んだ通常国会がきのう事実上、閉会した。

 働き方改革関連法は、厚生労働省による労働時間調査のデータに問題が見つかってつまずいたものの、国会提出前に裁量労働制の対象拡大部分を削除して成立にこぎ着け、首相の体面は何とか保たれた。

 そのほかにも、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法や、成人年齢を18歳に引き下げる改正民法など、国民生活に密接な法律が成立した。

 にもかかわらず、活発な議論が行われた印象がないのは、安倍政権のもとで深まった与野党対立の結果だろう。野党の反対を与党の数の力で押し切る強引な国会運営が目立ったことは否めない。

 統合型リゾート(IR)実施法を拙速な審議で成立させる必要があったのか。カジノ解禁という賛否の分かれる論点が含まれるだけに、国民の理解を得る熟議がなされなかったことは残念でならない。

 野党が多弱化している今なら無理も通せると与党は高をくくっているように見える。そんなおごりが鮮明に表れたのが参院選の「合区救済」を目的とした改正公職選挙法だ。

 かつて「国会の華」といわれた首相出席の予算委員会審議は不祥事追及の場となった。政権側は不誠実な答弁を繰り返し、不毛なやり取りが聴く者をうんざりさせた。

 森友、加計問題は行政府が立法府にうそをつき続けた、平成史に残る不祥事だ。安倍首相周辺や妻昭恵氏の関与が疑われているのに、関係者の証人喚問などに及び腰の姿勢をとり続けた与党の責任は重い。

 首相は国会閉会によって乗り切ったと考えているのかもしれないが、9月の自民党総裁選で3選を果たしてもみそぎにはならない。国会は特別委員会を設置し、真相解明と政治責任の追及を続けるべきだ。

 国会の役割は立法と行政監視だけではない。人口減少問題や朝鮮半島情勢などの大きな課題を与野党が論じ合い、国民と政治認識を共有すべきなのにそれが機能していない。

 首相と立憲民主党の枝野幸男代表が「党首討論の歴史的使命は終わった」と言い放った場面は象徴的だった。骨太の議論ができる国会に立て直さなければならない。

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