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梅津時比古・特別編集委員の「コンサート」にまつわるエッセー。

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新国立劇場の「フィデリオ」 生きているベートーベン=梅津時比古

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=寺司正彦撮影
=寺司正彦撮影

 真理や理想は時代によって変わる。それは日常の経験に照らし合わせると明らかである。ガリレオの時代、真理であった天動説は次の時代に誤りとされた。革命や政変が起こる度にそれまでの時代の理想は否定される。社会の変化に伴い、宗教も思想も変わり続ける。今、私たちが真理と思っているものも、次の時代には誤りとされるだろう。

 ベートーベンが苦心して創作したオペラ「フィデリオ」。政治犯として地下牢(ろう)に幽閉されているフロレスタンを、妻のレオノーレが男装してフィデリオと名乗り、刑務所に入り込んで救出しようとする劇的な筋立てである。ベートーベンの音楽の密度は高いが、交響楽的で、オペラの盛り上がりには欠ける。また権力闘争や愛が絡む物語が、夫婦愛によってすべて救済されることにも、少々違和感を持つ。このオペラの上演の難しいゆ…

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