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我らが少女A

/346 第9章 26=高村薫 田中和枝・挿画監修

 寝静まった病棟に浮かぶナースステーションの明かりのなかで、雪子はひとり石になっている。上田亜沙子がほんとうは手紙のことをずっと気にしていたというのは、自分の臆測にすぎない。電話で聞いた声の感じに、ふと違和感を覚えたにすぎないのに、何の裏付けもないことを今夜はまたどうして警察に話してしまったのかと自分に問い続ける。脅されたわけでもないのに、気がつくと舌が回っていて、まるで知らない人間が話しているようだった。ひょっとしたら自分は、無意識のうちに亜沙子に復讐(ふくしゅう)していたのだろうか。自分のなかにそんな思いが潜んでいるのだろうか。もういや! いや! いや!

 同じ夜、そうして雪子が蒼白(そうはく)な顔をして幽霊のように自分を苛(さいな)んでいるとき、その娘…

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