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我らが少女A

/348 第9章 28=高村薫 田中和枝・挿画監修

 それでもクリスマスイブの朝は来る。栂野雪子は一晩悩み抜いた末に腹を決めると、気を取り直して少し化粧をし、夜勤明けの病院を出る。上田亜沙子が手紙のことで嘘(うそ)をついたとしても、その理由を詮索したり追及したりして得るものは自分にはない。相手へのわだかまりと許したい思いの間で揺れている自分に必要なのは、事実を覗(のぞ)き込むことではなくて蓋(ふた)をすること、余計なことは考えないこと。それが雪子の当面の結論だ。そうして午前十時ごろ、その姿は品川駅の駅ビルにあり、ふだんは覗くだけのディーン&デルーカのデリカをあれこれ、ダロワイヨのオペラとマカロン、スターバックスのドリップバッグを買い揃(そろ)えて高速バスに乗る。バッグには以前から揃えてあった毛糸と編針も入っている。

 そして、昼前には木更津の君津中央病院に着き、西病棟五階のデイルームで雪子は上田亜沙子と二人だけのク…

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