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我らが少女A

/352 第9章 32=高村薫 田中和枝・挿画監修

 午前八時過ぎ、多磨駅は一年も残り少なくなった月曜日の通勤客がいつものように武蔵境行きに吸い込まれてゆき、ホームで指差喚呼をする小野がおり、改札に立つ助役がおり、開店準備を始めた駅前の商店主たちがいる。おはよう! やあ、おはよう! 昨日の競艇の市原カップはまた万舟券が出たらしい。外大はもう授業はないが、大学に出てくる学生たちはおり、一本前の是政行きには、春に上田朱美に似ていると思った女子学生が乗っていて、小野はちょっと眼(め)を留めた。とくに何を考えたわけでもないが、その女子学生、あるいは上田朱美の顔をまた少し頭の片隅に浮かべたまま改札に立つ、その頭上を小型機の低い爆音が流れてゆく。

 浅井忍はパッカー車と伴走しては飛び乗り、飛び降り、また飛び乗って、燃えるゴミの回収に精を出す。朝一番に営業所に福島の饅頭を持っていったら、髪切った? 事務員の小母さんに声をかけられ、おそ松さんのアホ毛のないのがチョロ松だっけ? クソ松じゃねえの? 同僚たちが笑い、忍は一緒にへらへら笑ってみせた。何とでも言いやがれ。今日の天気は快晴。夜は忘年会だ。

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