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諫干請求異議訴訟

制裁金の返還請求も 30日控訴審判決

諫早湾潮受け堤防=長崎県諫早市で2018年5月、本社ヘリから森園道子撮影

 国営諫早湾干拓事業(長崎県、諫干)を巡り、堤防開門を強制しないよう国が漁業者に求めた請求異議訴訟の控訴審判決が30日、福岡高裁(西井和徒裁判長)で言い渡される。判決は開門を命じた福岡高裁判決(2010年確定)を無効化して国の請求を認める内容になる見通しで、今後は国側が確定判決に従わず漁業者側に支払ってきた制裁金を「不当利得」として返還請求する公算が大きい。

 開門しない国に科す制裁金を巡っては佐賀地裁が14年4月、開門するまで漁業者1人当たり1日1万円を支払うよう命じる「間接強制」を決定。その後、1日2万円に増額されて最高裁で確定した。国の支払総額は今月10日現在で約12億円に上るが、高裁は30日の判決と同時に支払い停止も認める見通しだ。

 請求異議訴訟で、国側は▽開門のための対策工事が営農者らの反対運動で不可能になった▽漁獲量が増加傾向に転じた▽国は仮処分決定で開門禁止義務を負った▽漁業者の漁業権は消滅している--などと確定判決の口頭弁論が終結した10年8月以降に事情が変わったと強調。「確定判決の原告である漁業者に開門請求権はなく、確定判決の執行力は取り消されるべきだ」と訴えていた。

 そのうえで国は「漁業者が受け取った制裁金は不当利得で全額返還されるべきだ」と主張。30日の高裁判決が漁業者の請求権が失われた特定の時期を示した場合は、それ以降の支払い分を不当利得として返還請求する方針だ。ただ、返還請求には、新たな民事訴訟が必要な可能性もある。

 漁業者側は、国側の事情変更の主張に対して「漁業被害は続いており、漁業権も消滅していない」などと反論。国が支払った制裁金は「有明海再生に活用する」として弁護団が管理しているが、制裁金は漁業者の個人所得として所得税が課されているため、一部は納税などに充てられている。弁護団は返還請求された場合の対応について「判決内容を踏まえて検討する」としている。【平川昌範】

制裁金は弁護団が管理 所得税の支払いなど生活圧迫

 国に開門を命じた福岡高裁判決の原告ら45人に支払われる制裁金は、弁護団が管理して漁業者個人には原則配分されていない。しかし、税務署は1人当たり年間730万円の制裁金を個人所得としているため、漁業者らは制裁金分を上乗せした所得税を支払わなければならない。さらに所得に応じて決まる介護保険料や医療費、保育料などの負担額が増えて生活が圧迫されている。

 原告の一人で佐賀県太良町の漁師、平方宣清さん(65)は難病指定されている「後縦靱帯骨化(こうじゅうじんたいこっか)症」を患っており、毎月リハビリ治療や投薬を受けている。月500円ほどだった医療費の負担は、制裁金が支払われるようになって5000~1万円に増加。介護保険料も年約3万円から約13万円に急増したという。

 平方さんは「制裁金は国に開門調査をさせるために最高裁が決めたこと」と指摘。「私たちはお金を得るのが目的ではないのに逆に負担が増えている。求めてきた開門の努力さえしてこなかった国が、今さら全額を返せと言うのは全く納得できない」と憤っている。

 【ことば】請求異議訴訟

 確定判決で負わされた法律上の義務について、後になって状況が変わった場合、強制的に従わされることがないよう判決の執行力の取り消しを求める訴訟。確定判決後に債務を弁済した際、差し押さえなどの強制執行を防ぐためなどに起こされる。

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