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社説

諫早開門命令の否定判決 事態の打開にはならない

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 国営諫早湾干拓事業を巡って福岡高裁が、国に潮受け堤防の開門を命じた確定判決を事実上無効化する判決を言い渡した。確定判決に従わない国の姿勢を追認した形だ。

     今回の判決で無効化された8年前の同高裁の判決は、佐賀県の漁業者らの主張を認め、排水門を5年間開いて環境への影響を調査するよう命じていた。

     国は干拓営農地への悪影響を防ぎながら実効性のある調査をするための開門方法や、営農者に被害が出た場合の補償など説得力のある具体策を練る必要があったはずだ。

     ところが国は、堤防建設の正当性を主張し、開門を回避する姿勢を固持した。

     長崎県の営農者らが開門差し止めを求めた裁判では、国が敗訴すれば開門しない義務が認められるため、事実上の「不戦敗」を狙って十分な反論もしなかった。こうした姿勢が、漁業者側の不信感を募らせた。

     結局、開門義務を巡って相反する判決を受け、開門しないまま漁業者側に制裁金を支払い続けた。その総額は約12億円に達する。

     今回の判決は、漁業者が確定判決当時有していた漁業権は10年の免許期間の経過で消滅し、継続して免許を受けても以前の漁業権に基づく開門請求権は引き継がないと認定した。国の形式的な主張を容認した形で、制裁金の支払いも停止される。

     しかし、この判決で漁業者が納得することはあるまい。漁業者の理解を得られなければ、干拓事業を巡ってこじれた糸は解きほぐせない。

     戦後の食糧難解消のためのコメ増産という当初の目的が失われた後も干拓事業を強行し、諫早湾に対立をもたらしたのは国である。今回の判決で開門の義務は免れても、漁業者と営農者との紛争を打開する責任を免れるわけではない。

     これまで国は、開門しない代わりに100億円の基金を設けて漁場環境を改善するとの解決案を提示。今回の福岡高裁もそれに沿った和解勧告案を示したが、不調に終わった。

     国に対して不信感を強める漁業者側が、「開門せず」が前提の案に理解を示すことは考え難い。

     国は、紛争の原因発生者としての責任を深刻に受け止め、事態の打開に向けてさらに汗をかくべきだ。

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