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西淀川和解20年

公害、過去の話じゃない 未認定患者

ぜんそく患者らが体操などをして健康を保つ教室に参加する池永末子さん=大阪市西淀川区で2018年7月20日、梅田麻衣子撮影

 大阪の西淀川公害訴訟の最終和解から20年を迎えたが、今も公的支援を受けられずに苦しみ続ける人たちがいる。大阪市西淀川区の池永末子さん(74)は、国による公害患者認定が打ち切られた後にぜんそくを発症した未認定患者だ。「公害は決して過去の出来事ではない」。制度の枠から漏れた患者への救済を求め、声を上げ続けている。

     池永さんは1970年、結婚して福岡から大阪へ来て空の色に驚いた。町工場から出る黒い煙が立ち込め、ハンカチで口や鼻を押さえないと出歩けなかった。3歳だった長女はせきが止まらず、眠れない夜が続いた。気管支ぜんそくと診断され、公害健康被害補償法に基づく認定を受けた。自身もせきが出たが、娘のことで手いっぱいで申請できなかった。

     長女は訴訟の原告になり、自身も裁判や公害防止の署名活動に加わった。90年代後半にはぜんそくの症状が悪化。寝込むことが増え、医師には大気汚染の影響を指摘された。

     長女の医療費は公費で賄われるが、自身は通常の自己負担。激しい発作は減ったが、薬や吸入器は手放せない。今も通院を続け、費用のことがいつも頭をよぎる。現在の負担は月数千円だが、年金生活には重くのしかかる。せきが出ても我慢し、通院を控えたことも。患者たちが線引きされることに、はがゆさを感じてきた。

     東京都は、ぜんそく患者の医療費を助成している。東京保険医協会の調査では、患者の約7割が積極的に治療しようと思えると答え、約半数は症状が改善したと回答している。池永さんは「助成されれば受診をためらわなくなり、苦しむ患者も減る」と訴える。

     医療費助成を求めて署名活動や省庁の訪問を続け、5年ほど前からは地域の小学校でも経験を伝えている。「大阪西淀川公害患者会」と書かれた白いたすきをかけ、「今の青空は当たり前にあるのではない。このたすきを、あなたたちに手渡さないといけない」と児童らに呼びかける。

     20年の月日が流れても、病が癒えることはない。「今も多くの患者が苦しんでいる。国は、救われていない患者に手を差し伸べてほしい」【宮嶋梓帆】

    助成あれば症状緩和

     尾崎寛直・東京経済大准教授(環境政策)の話 未認定患者は医療費の負担を抑えるために受診や服薬を控え、適切な治療を受けられず重症化してしまう。医療費助成で適切な治療を後押しすれば症状を緩和でき、社会的費用の抑制にもつながる。長年の深刻な公害で取り込まれた汚染物質で気管支がむしばまれ、後年にぜんそくを発症する例もある。国や企業は、これまでの大気汚染に対して責任を果たさないといけない。

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