SUNDAY LIBRARY

岡崎 武志・評『綾蝶の記』『消された信仰』ほか

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今週の新刊

◆『綾蝶の記』石牟礼道子・著(平凡社/税別2600円)

 今年2月に逝去した石牟礼道子。生涯を懸けて、水俣病を告発、記録する先頭に立った。『綾蝶(あやはびら)の記』は、全集未収録の文章、インタビュー、対談、書評を収集した。編集は渡辺京二。

 書く、語る、会話する。著者による生前の言葉を読むと、すべて遺言のように感じられる。「この世にまだ、いのちを得ぬものたちの世界に、半ばは身を置いている、という感じが、もの心ついて以来ある」はその一例。

 水俣に育ったことは宿命であり、つねに祈るように言葉を紡いだ。もちろん水俣の「文明の毒」による汚染への糾弾は、やむことなく続けられた。日本の農村の嫁が、「苦しい事態」と立ち向かうことで表現者として鍛えられたことが、本書を読むとわかる。

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