利用目的のない余剰プルトニウムは持たない。核不拡散の観点から日本が示してきたこの原則をどう具体化し、国際社会に示すか。
政府の原子力委員会がプルトニウムの利用指針を15年ぶりに改定し、保有量削減を初めて盛り込んだ。
核セキュリティーへの関心の高まりに加え、日米原子力協定が自動延長されたところでもあり、改めて日本の姿勢を示すことは重要だ。しかし、改定の中身は中途半端で実質的な在庫削減の道筋が見えない。これでは国際社会の信頼は得られない。
核燃料サイクルはウランの枯渇を懸念して構想されたが、ウランは十分にあり、一方、サイクルの要である高速炉の実現は困難で、経済的にも見合わないことがわかった。米英独などが撤退したのはこのためだ。
ところが日本はサイクルにこだわり、プルトニウムを通常の軽水炉で燃やすプルサーマルを「つなぎ」としてきた。ただ、原発事故でこれも進まなくなり、結果的にプルトニウム在庫を国内外に47トンも抱える。
このまま青森県の再処理工場を動かせば在庫はさらに増える。核兵器に転用できるだけに、近隣諸国や米国から懸念の声が出るのは当然だ。
改定指針には、再処理工場の稼働をプルサーマルで消費できる分に限定することや、海外保有のプルトニウムを電力会社が協力して削減することなどが盛り込まれた。
一方で、再処理より削減を優先する方針は示されず、在庫削減にめどが立たなくても再処理工場を動かすことが前提となっている。これでは全体の削減につながらない。
本気で削減を進めるには、再処理工場の凍結や、プルトニウムの直接処分に向け、政府が踏み込むべきだ。海外在庫を保管国に引き取ってもらうことも検討課題だ。
そして何より、再処理・核燃料サイクル政策を続ける意味を改めて問い直さねばならない。
プルトニウム消費のためにプルサーマル拡大を求める声も一部にあるが本末転倒だ。プルトニウムを使う燃料は通常のウラン燃料に比べ高くつく。核拡散の懸念も生み出す。使用済み燃料の処分にも困難が伴う。
さまざまな面で問題が大きいサイクル政策からの撤退をこれ以上先延ばしにすべきではない。