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炎のなかへ

/224 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

 交差点は横倒しの煙突になった。今は炎の通路である。火勢は強くなったり、弱くなったりした。ときに黄色い炎が絶えて、白い煙や黒い煙に替わることがある。この先の街の様子は命をかけて確かめてきた。半分は燃えているが、残りはまだおおきな火災にはなっていない。通りの左側をいけば、なんとか四ツ目通りまで逃げられるだろう。

 この夜がくるまで、誰が二車線の交差点ひとつ渡ることが命がけになると想像しただろうか。空襲で周囲のすべてが燃えるとき、道路さえも人の命をやすやすと奪う凶器になる。昼のうちから吹いている北風は夜中になってもまだ強かった。燃え始めた街の甍(いらか)に強風が吹き寄せると、ぱちぱちと火の粉があがり、東京湾のほうへ真っ赤な布のようにはためき流されていく。段ボール、戸板、木切れ、畳。夜空には火のついたあらゆる…

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