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社説

法廷と取り調べ映像 「印象有罪」の制御が必要だ

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 取り調べの映像を法廷でどう活用するのか。東京高裁が、証拠として過大視することに対し否定的な見解を示した。

 栃木県日光市(旧今市市)の小学1年女児殺害事件の控訴審判決だ。

 高裁は1審同様に被告に対し無期懲役を言い渡した。1審は、取り調べ映像を法廷で7時間にわたり再生した上で、「具体的で迫真性に富んでいる」として自白の信用性を認定した。しかし高裁は「供述の信用性が主観で左右される。印象に基づく判断となる可能性が否定できない」との理由でその判断を違法とした。

 検察は裁判員裁判対象事件で可視化(録音・録画)の試行をしており、昨年度は99・9%に達した。

 最高検は2015年、録音・録画した映像を実質的な証拠として活用するよう各地の検察庁に通達を出した。その後、物的証拠の少ない事件で、立証の武器として取り調べ映像の証拠調べが請求され、採用されるケースが増えている。法廷での再生は、この2年で180件を超えた。

 だが、映像は検察側が切り取った取り調べの一部に過ぎない。有罪・無罪の認定は、他の証拠と総合して判断すべきである。

 大阪地検特捜部の郵便不正事件など、不適切な取り調べによる冤罪(えんざい)事件が近年相次いだ。密室での取り調べに強要や誘導はないか。可視化の目的は取り調べが適正に行われているのかをチェックすることにある。

 だが、その範囲を超え、被告の供述の信用性の判断に映像が過度に使われるのは、制度の趣旨に反している。有罪の立証が映像での印象戦になってはならない。

 録音・録画の映像は裁判員らに強い印象を与える。静かに自白している映像を見れば、任意に供述していると思うだろう。だが、精神的に追い詰められた被告が捜査側の意向に沿って供述してしまうことは過去の例を見ても珍しくない。

 改正刑事訴訟法が来年6月までに施行され、裁判員裁判対象事件などで、取り調べの全過程の可視化が義務づけられる。今以上に映像が法廷で扱われるかもしれないが、証拠の一つだ。警察・検察は客観的な証拠を集め、自白があっても他の証拠との整合性に留意し、丁寧な立証に努めるべきだ。

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