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家庭的な雰囲気の「このゆびとーまれ」の様子

 2017年4月に制定されたいわゆる「地域包括ケアシステム強化法」は、介護保険法や老人福祉法、医療法、児童福祉法、高齢者虐待防止法など関係する約30本の法律を束ねて改正した法律だ。

     具体的には、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに「共生型サービス」を加え、それまで縦割りだった福祉サービスを、新たな複合型の地域密着サービスへと転換させることを目指している。

     そのような政策転換の背景には「富山型デイサービス」があった。それは1993年7月に惣万佳代子さんと西村和美さんら3人の看護師による民間デイサービス事業所「このゆびとーまれ」として誕生した。

     「このゆびとーまれ」は、年齢や障害の有無にかかわらず、身近な地域で誰もがデイサービスを受けられる場所だ。惣万さんらが病院に勤務していた時、退院許可が出ても家庭の事情で帰宅が困難で、家に帰りたいと泣いているケースに直面した。そこで家庭的な雰囲気のもとで、患者の「畳の上で死にたい」という願いに寄り添う場として作られたのだ。

     その施設は民家を改修した小規模な建物で、利用者を限定せず、地域の身近な場所で昼食を共にする共生型介護が特色だ。この「このゆびとーまれ」は、既存の縦割り福祉にはない柔軟なサービスの形として開設当初から注目を集めた。

     ここでは、徘徊を繰り返していた高齢の方が、毎日来る赤ちゃんを見て徐々に落ち着きを取り戻したり、障がいを待つ人も表情が明るくなるなど、共に暮らすことで相乗効果が生み出された。このような「このゆびとーまれ」の活動が知られるようになると、感動したという反応がたくさん寄せられ、「共生ケア」として全国に広まっていった。

     この小さな民家は、狭いながらも“我が家の食卓の場”であり、既成の福祉サービスの在り方に一石を投じる存在となっている。地域包括ケアシステム強化法によって、まさに富山方式に学び、縦割りの福祉サービスを変革する一歩となりそうだ。

     しかし、現在も対象者ごとの個別法は残っていて、法律の谷間が生じ課題が多いことも指摘されている。欧州では児童福祉法以外は福祉関係法律は一本化されている。次の段階は、欧州で実施されている包括法である「社会サービス法」創設への変革が求められることとなる。(NPO法人地域福祉研究室pipi理事長 渡邉洋一)

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