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西日本豪雨

決壊ダム、危険周知せず 県は6倍の土砂想定

西日本豪雨の土石流で決壊する前の砂防ダム=広島県坂町小屋浦で2018年4月、地元住民提供
広島県坂町小屋浦地区と砂防ダム
広島県坂町小屋浦地区の土砂災害対策イメージ

 西日本豪雨に伴い広島県坂町小屋浦地区で発生した土石流を巡り、砂防ダムでせき止める計画量約9000立方メートルの6倍超となる約5万5000立方メートルの土砂崩れを、広島県が事前に想定していたことが明らかになった。今回の豪雨による流出量は不明だが、砂防ダムは決壊し、同地区では死者15人、行方不明1人の被害が出た。災害リスクが住民に周知されていなかったことが被害を大きくした可能性がある。

 小屋浦地区は瀬戸内海と山に挟まれ、中心部を流れる天地川沿いに約1800人が暮らす。決壊したダムは1950年、天地川の河口から約1.2キロ上流に造られた。石積み式で、幅約50メートル、高さ約11メートル、厚さ約2メートル。厚さ3メートル以上を求める現行の設計基準には適合していなかった。

 県は土砂災害の危険性が高いとして、2007年度にダムの約200メートル上流で新ダム建設事業に着手した。100年に1度の豪雨(1日277ミリ)で旧ダムの上流域計約1.54平方キロから土砂約5万5000立方メートルが出ると想定。新ダムで約3万6000立方メートル、旧ダムで約9000立方メートルをせき止める計画だが、残る約1万立方メートルの対応策は定められないままだった。

 想定する土砂崩れでは土砂の8割が砂防ダムからあふれるが、町の広報紙や県のホームページで積極的に住民に伝えることはなかった。新ダムは12年度の完成を目指したが、用地買収などが難航。完成目標は20年度にずれ込み、豪雨前には旧ダムに通じる工事用道路が敷かれただけだった。

 さらに小屋浦地区は坂町で唯一、土砂災害警戒区域の指定作業が終わらず、指定に必要な基礎調査は今年9月に結果を公表する予定だった。県土砂法指定推進担当によると、人家が多い地域を優先しながら順番に作業を進めていたという。

 7月6日夜の土石流で地区では住宅430戸以上が全半壊し、死者15人の大半が逃げ遅れだったとみられる。自宅1階が土砂で埋まった出下孝・元坂町議(76)は県の想定について「町や県から説明を聞いた記憶が全くない。砂防ダムでは太刀打ちできないと周知されていたら、避難を呼びかける町の放送を聞かずとも住民らは避難したはずだ」と話す。

 県砂防課の担当者は「新設計画そのものが、安全性が十分ではないという強いメッセージになると考えていた」と説明する。【矢追健介、松浦吉剛】

 木村玲欧・兵庫県立大准教授(防災心理学)の話 犠牲者の多さは、行政が伝えたい災害リスクが住民にきちんと届かなかったことを示唆している。住民にとって「生きた情報」にするためには、発生する土砂の8割は砂防ダムでせき止められないなど、危険性をより実感しやすい形で届ける必要があった。

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