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余録

戦時中、富士山頂の測候所は気象と関係ない観測も命じられた…

 戦時中、富士山頂の測候所は気象と関係ない観測も命じられた。東京の灯火管制の状況を夜半の0時と未明の3時に点検する役目という。当然、やがて各地の空襲を目撃する(志崎大策(しざき・だいさく)著「富士山測候所物語」)▲「西を見ると、赤石岳の左側が明るく、名古屋方面が(空襲で)火災のもよう。南西の浜松方面にも大火災。気持ちは文字では表せない」。終戦の年の3月にこう記しているのは「カンテラ日誌」と題されてきた測候所の日誌である▲戦前に始まり14年前に無人化するまで、所員が常駐して行った富士山頂の気象観測だ。68年間にわたり所員が書き継いだ日誌には、4人の殉職者を出した厳しい観測活動と共に、戦争はじめ山頂まで及んだ時代の変転が記されていた▲「いた」と過去形なのは、何と日誌を保管していた東京管区気象台が「廃棄した」というからだ。個人的感想などが書かれた日誌は行政文書でなく、不必要なものをいつまでも保管できないという。耳を疑うようなお役所答弁である▲読者の中には富士山レーダーの建設を描いた石原裕次郎(いしはら・ゆうじろう)主演の映画「富士山頂」に胸躍らせた方もおられよう。そんな当時の記録も含む日本の気象観測史の英雄叙事詩のような史料である。なぜ図書館や研究機関に渡せなかったのか▲「いのちを賭けし観測(みとり)こそ 吾(わ)が欣(よろこ)びの使命なり 永久(とわ)に伝うる記録こそ 吾が欣びの貢献(みつぎ)なり」。30年間も山頂の観測を指揮した藤村郁雄(ふじむら・いくお)の歌の一節だ。気象台も少しは先人に敬意を払ってはどうか。

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