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ゆっくりお茶を

原爆と「父と暮せば」 記憶を受け継ぐために

被爆アオギリ
編集長

 ほんんでいたことがありますか。

     わたしはあります。正直しょうじき告白こくはくすると、大人おとなになったいまでもかえすとかならほんが2さつあります。かならず、ですよ、それも大人おとなが! 自分じぶんでもちょっとおどろいてしまうほどです。

       ◇◆  ◆◇

     ひとつは、井上いのうえひさしさん(1934~2010ねん)がいた「ちちくらせば」というほんです。もうひとつは浜田広介はまだひろすけさん(1893~1973ねん)の「いた赤鬼あかおに」です。「いた赤鬼あかおに」はすごく有名ゆうめいなので、「ちちくらせば」についてご紹介しょうかいしましょう。高学年こうがくねんなら十分読じゅうぶんよめるほんですし、ぜひんでほしいとおもいます。

     「ちちくらせば」は戯曲ぎきょくです。戯曲ぎきょくとはお芝居しばい台本だいほんのこと。舞台ぶたいは1948ねん戦争せんそうわって3年後ねんご広島ひろしまです。一人ひとりらしの23さい美津江みつえは、ある男性だんせいこいをします。ところが全然積極的ぜんぜんせっきょくてきじゃありません。むしろこいからげようとしているみたい。あまりのじれったさに、原爆げんばくくなった美津江みつえちち竹造たけぞうがなんと幽霊ゆうれいになっててきます。そしてむすめの「こい応援団長おうえんだんちょう」として、いっしょうけんめいがんばるのですが……。

     これはおどろくべき作品さくひんです。なぜなら、人類最大じんるいさいだい悲劇ひげき広島原爆ひろしまげんばくをテーマにしながら、あえて悲劇ひげきかなしいお芝居しばい)ではなく喜劇きげき(おもしろいお芝居しばい)としてかれているからです。

     作者さくしゃ井上いのうえひさしさんは、この作品さくひんくために、被爆者ひばくしゃ手記しゅき何百人分なんびゃくにんぶんみました。そして「このようなことがけっしてかえされてはならない。そのためにはこのことをけっしてわすれてはならない」とかんがえました。けれども、本当ほんとうにつらいはなし本当ほんとうかなしいはなしひと無意識むいしきけ、ときにはわすれようとします。だからあえて、人々ひとびと何度なんどかえしたくなるような喜劇きげきにしてげたのです。

     無論むろん、おもしろいだけではありません。竹造たけぞう美津江みつえ愛情あいじょうがあちこちにあふれています。んでいて、自分自身じぶんじしん竹造たけぞう美津江みつえになったようにおもえてきて、なみだまらなくなるのです。

     おそらく井上いのうえひさしというひと天才てんさいでした。「原爆げんばくのような悲惨ひさん体験たいけん喜劇きげきにするなんてけしからん」。そんな批判ひはん予想よそうされるなか、作家生命さっかせいめいをかけてこの作品さくひんき、傑作けっさくしたのです。

     どうしたら地球上ちきゅうじょうから核兵器かくへいきをなくすことができるのか。そのいにかうための一歩いっぽとして、んでほしい一冊いっさつです。もしんだら、ぜひ感想かんそうかせてください。【編集長へんしゅうちょう太田阿利佐おおたありさ

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