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社説

原賠法の見直し先送り まさかに備えぬ責任放棄

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 原発の過酷事故で生じる膨大な賠償金のリスクに、これでは対応しきれない。

     政府が、原発事故に備え電力会社に用意を義務づけている賠償金(賠償措置額)を現行の最大1200億円に据え置く方針を表明した。

     福島第1原発事故では、賠償額が8兆円を超え、原子力損害賠償法に基づく措置額を大幅に上回った。このため、原賠法の見直しを議論していた内閣府の専門部会は、措置額を引き上げることで一致していた。

     だが、引き上げは電気料金の値上げにつながる。電力会社は、民間保険と政府との補償契約で措置額を手当てしており、保険料や補償料の増額が必要となるからだ。これを嫌う電力会社は国費投入を求めたが、世論の反発を恐れた政府は受け入れず、調整作業は難航した。

     政府の補償契約の更新時期が来年末に迫っており、事実上の時間切れで引き上げは見送られた。

     電力会社と政府が事故の賠償リスクの責任をなすり付けあう構図だ。そうした中で、原発の再稼働がなし崩し的に進んでいる。これでは、原発安全神話がまかり通った3・11前と何ら変わりがない。

     政府は福島第1原発事故を受け、東電に措置額を上回る賠償費用を融資し、東電と大手電力が協力して返済する相互扶助の制度を作った。

     原賠法は措置額とは関係なく、上限無しで電力会社に賠償金の支払いを義務づけているためで、新たな事故が起きた場合も、この制度を活用して対応する方針だ。

     しかし、電力自由化でお互いが競争相手となる中、電力会社の相互扶助がいつまで続くか不透明だ。

     電気事業法改正で、電力会社は国への届け出だけで解散ができるようになった。事故を起こした電力会社が経営に行き詰まって法的整理を選択すれば、賠償が滞る恐れもある。

     政府は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原子力規制委員会の審査に合格した原発は再稼働を進める方針だ。その一方で、現状では、原発の過酷事故に対する賠償措置の枠組みが不十分なまま放置され続けることになる。

     あれほどの事故を経験しても、まさかへの備えを強化しない政府や電力会社の姿勢は筋が通らない。

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