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井波律子・評 『紫陽花舎随筆』=鏑木清方・著

 (講談社文芸文庫・1944円)

静かに誠実に生きた面影をあらわす

 明治、大正、昭和にわたって活躍した日本画家、鏑木(かぶらき)清方(きよかた)(一八七八-一九七二)の随筆集。清方は明治十一年、神田で生まれたが、生後まもなくから、銀座界隈(かいわい)を中心に転居を繰り返した。ちなみに、母が引っ越し好きだったせいもあり、生涯を通して引っ越し回数は三十回に及んだという。父は幕末の文人で、清方が八歳のとき、『やまと新聞』を創刊したが、しだいに経営が苦しくなり、家計が成り立たなくなる。このため、父の勧めにより、十三歳のとき水野年方の弟子となって挿絵画家をめざし、二年後には『やまと新聞』にコマ絵を描いた。以後、父に代わり祖母と母を支えて生計を立て(父は清方が二十四歳のときに死去)、二十代に入るや、多くの新聞や雑誌から注文を受け、挿絵画家としての地歩を固める。生涯の友泉鏡花と知り合ったのも、この時期(清方二十三歳)である。

 しかし、やがて清方はけっきょく小説の枠組みから自由になれない挿絵に飽き足りず、創作画へと方向転換す…

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