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読書日記

著者のことば 岩間敏さん 外交力欠き開戦へ

岩間敏さん

 ■アジア・太平洋戦争と石油 岩間敏(いわま・さとし)さん 吉川弘文館・3240円

     第二次世界大戦では、邦人およそ310万人が亡くなった。戦前、国家を揺るがす石油危機に見舞われた日本は、南方にそれを求めて開戦に踏み切った。日本史上最大の悲劇であるあの戦争を、石油なしに語ることはできない。しかしそのど真ん中のテーマで戦争を体系的に振り返った専門書は、あまり見当たらない。本書は戦史研究の新たな地平を切り開く仕事だ。

     早稲田大の学生時代、「民族問題、特にアジアのそれに関心がありました」。日本での報道が少なかったことから、「写真と文章で伝えたい」と大手新聞社に入ったものの、できそうにないと分かるとあっさりと退社した。「開発途上国から紛争をなくすには、地場産業を興して経済が自立する必要がある」と感じ、石油に関心を持った。

     民間のシンクタンクを経て石油開発公団(後の石油公団)に入った。ハーバード大客員研究員、同公団パリ、ロンドン事務所長、理事などを歴任。石油の実態と歴史を学んだ。

     59歳で同公団を退職、関連会社で64歳まで勤めた。「60歳くらいから、どこかの大学で歴史を学びたいと思いました」。「幅広く研究ができそう」と選んだのは、一橋大の吉田裕教授の研究室だ。日本近現代史、戦史研究の第一人者の下で、歴史学の方法を学び、博士号を得た。

     本書では開戦までの石油を巡る外交が詳細に記される。アメリカの制裁を受けた日本は東南アジアのオランダ領の石油を求めて交渉を始めるが、交渉役に立てた財界人は外交の素人で、外交儀礼を欠きオランダ側が硬化してしまう。期待した成果は得られず、石油確保は暗礁に乗り上げる。「結局、外交力がなかった」ことが大きかったのだ。今は?と考えさせられる。

     また超重要戦略物資に不安を抱えながら、なぜ戦争に踏み切ったのか。豊富なデータで迫る。さらに開戦後、補給路がずたずたに切り裂かれる様も詳細に明らかにした。

     石油を知り、かつ戦史にも通じるまれな研究者だからこそ、本書は誕生した。学問的な価値のみならず定年を迎えたサラリーマンの指針をも示す労作である。<文と写真・栗原俊雄>

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