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炎のなかへ

/233 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

 時田家の七人はひとりも欠けることなく、なんとか四ツ目通りまでたどりついた。錦糸町駅の脇を抜けて、南北に押上と洲崎をむすぶ幹線道路である。片側三車線もある広々とした道で、中央には路面電車の軌道もとおっていた。

「うわー、あれはなあに」

 直邦が口を開いて指さしていた。タケシもその先に目をやる。歩道の横につくられたおおきな防空壕(ごう)の口から、炎が噴きだしている。花火というより火炎放射器のような炎がまっすぐ夜空に伸びていた。ごうごうと炎が燃えあがる音が耳に飛びこんでくる。火災の音はずっと周囲に鳴り響いていたのだが、無意識のうちにきかないようにしていたのだ。

 あれだけおおきな防空壕だ。どれほどの人たちが避難していたことだろう。数十人ではきかないはずだ。地下に掘られた暗闇のなか身を潜める数百人の避難民の白く冴(さ)える目と目を思い浮かべたところで、タケシは想像をやめた。亡くなった人について考えていたら、今夜を生き抜くことはできない。

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