メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

華恵の本と私の物語

/25 もうちょっとだけ子どもでいよう

[PR]

 「そのとき阿部あべくんがね、『おかあさんはほめてくれたもん』ってって、森山もりやまくんが『マザコンだ、キモ!』ってったの。そしたら阿部あべくんが『ふざけんな!』ってって、びかかって」

 「で、どうなったの?」

 ははがこちらをた。やっと、フライパンのナスから視線しせんをこちらにけた。

 「なんとね……」

 すこしもったいぶってをあけた。ははが、わたしにぐっと集中しゅうちゅうする。

 「阿部あべくん、いたの」

 「あらら」

 なーんだ、といった表情ひょうじょうはははまたナスをかきはじめた。はなしの「オチ」をったつもりだったけど、つまらなかったかな……。

 「で、阿部あべくんが『おかあさーん!』ってきながら森山もりやまくんをたたいたの。そしたら森山もりやまくんが『うっせーよマザコン!』ってたたきかえして。また阿部あべくんが、『おかあさーん!』ってたたいて。それを何回なんかいもポカスカかえして、わらないの!」

 はははプハッとした。よし、ウケた。

 ほんとうはそんなこと、阿部あべくんってないけど。そもそも、いてもいないのだけど。

 テーブルにナスのいたものならべ、あに部屋へやからてきた。三人さんにんで「いただきます」をして、コップにおちゃそそいだとき、

 「さっきおまえはなしにうそをってただろ」

 あにがボソッとった。

 ドキンとむねいたみがはしる。わたしはこえなかったふりをして、無視むししてごはんべた。

  + + + + 

 『もうちょっとだけどもでいよう』には、小学生しょうがくせいさきと、中学生ちゅうがくせいひかり二人ふたり姉妹しまいてきます。家族かぞくこい友達ともだち学校がっこうなど、日常にちじょうなやみはえません。長女ちょうじょひかり度々たびたび、ラジオにお便たよりを投稿とうこうするのですが、いつもつくばなしいています。はじめは、長年会ながねんあえていなかったおかあさんにいにはなしや、いもうとをやけどさせたはなしなど。ラジオのパーソナリティーは小説しょうせつのようにひとひかりのお便たよりを、どんどん紹介しょうかいしていきます。やがてひかりのうそはエスカレートし、おじいちゃんとおばあちゃんをにわめた、というおそろしいことまでいてしまいます。

 だれかをきずつけるうそはいけません。もないことをって信用しんようしてもらえなくなる場合ばあいもあります。でも、うそのはなしつくること自体じたいは、こころだったりします。

 わたしのまわりの大人おとなたちは「つくばなしをするって、ものすごく大切たいせつなことだよね」とひとばかりです。

 ひとたのしませようという気持きもちや発想力はっそうりょくは、大人おとなになってからやくつこともあります。

 うそをついているあなた。自覚じかくさえしていれば、きっと大丈夫だいじょうぶ。あまり自分じぶんめすぎないでくださいね。


『もうちょっとだけどもでいよう』

岩瀬成子いわせじょうこちょ

理論社りろんしゃ 1677えん


 エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. ソウル市長、遺体で発見 「遺言」残し失踪 元秘書がセクハラ訴え

  2. あぶり出された若年層感染 中高年へ「感染及ぶ兆し」 東京最多224人

  3. 特権を問う 「Yナンバーに気をつけろ」沖縄移住の女性が体験した「基地の島」の現実とは?

  4. 東京都、新たに感染者224人確認 過去最多 新型コロナ

  5. 「健康とはほど遠い」 陰性になっても続く倦怠感と嗅覚障害 新型コロナ「後遺症」

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです