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炎のなかへ

/235 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

 交差点を渡ると駅前の広場だった。バスの停留所の看板が焼け焦げ、まだくすぶっている電柱から垂れさがった電線に火花が散っている。淡い煙のなかをぼろきれのようになった避難民が右往左往していた。道路や歩道のあちこちには黒焦げの死体が様々な形で転がっている。二時間前にはいちいち手をあわせていたが、今は気にもとめなくなっていた。心はすり切れ、死者への悲しみも同情も湧いてこない。とおり道の邪魔になれば、またいで過ぎるだけだ。

 焼け落ちて中央がくぼんだ錦糸町の駅舎を横目で見て、省線のガードに向かう。ここには路面電車の停車場があったので、遺体の数も多かった。夜中の十二時過ぎでは運行などしていないけれど、人はいつも足を運んでいる場所に自然と逃げてしまうものらしい。

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