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工藤 美代子・評『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる』

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大人になって読むサリンジャーは命の息吹を感じさせてくれる

◆『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』J・D・サリンジャー/著 金原瑞人/訳(新潮モダン・クラシックス/税別1500円)

 今さらサリンジャーでもないだろうと思う。太宰治やサガンと同じくらいには気恥ずかしい。それでも何かしら理由がつけば読みたいのがサリンジャーだ。今回は金原瑞人の新訳に期待した。

 若い頃は誰だって自信がない。生き迷う。途方に暮れる。では、年を取ったら情緒は安定するのかといえば、そんなことはない。昔とさして変わらず、常に揺れているが、あきらめることも覚える。なぜなら、自分は特別な人間ではないと知ってしまうから。

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