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炎のなかへ

/237 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

 タケシは腹の底から叫んだ。

「登美ちゃん、逃げて」

 つぎの瞬間さっきまで登美子が立っていた歩道には、燃える家の残骸が炎をあげるだけだった。輻射(ふくしゃ)熱がひどく、とても近くにいられない。少女の姿はどこにも見えなかった。

「登美子ーっ」

 燃える残骸のなかに飛びこもうとした千寿子をよっさんが羽交い締めで押さえていた。娘を目の前で殺された母親はこんなふうに泣き叫ぶんだな。自分が死ねば、うちの母さんもこうなるのだろうか。

 振りむくと、君代が真っ赤な目を見開き、手拭いで口を押さえていた。また炎のなかにいくのか。身体(からだ)をじかに焼かれる痛みと火を吸いこんで焼けただれる鼻と喉の痛み。恐怖で震えがとまらない。タケシは涙で声が揺れないようにするのが精一杯だった。

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