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炎のなかへ

/238 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

「もうすこしだ、公園にいこう」

 タケシはふらつきながら全力で立ちあがった。右肩を登美子が支えてくれる。

「またタケシくんに助けられちゃったね」

 タケシは登美子の肩を借りて、公園まで足を引きずりながら歩いた。入口近くの立木は生きたまま燃えて、幹からぶつぶつと水蒸気をあげている。だが、木々の間には数日前に降った雪が泥をかぶった山になって残っていた。この冬は厳しい寒さだった。

 錦糸公園のあちこちに避難民が身を寄せていた。いけがきのなかに隠れる者、燃え残った大樹に集う者、呆然(ぼうぜん)と焦げた芝生のうえにへたりこむ者。公園周辺の火災は勢いを失っているようだ。だが、顔をあげると電線にはモンペが焼けて、足がむきだしになった若い女性の死体がぶらさがっていた。この公園でも炎の竜巻が起きたのだ。つぎにいつあの暴風が吹き荒れるかわからなかった。

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