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社説

大戦後のシベリア抑留 記憶の継承は国の責任で

 「日本が体験した大きな悲劇なのに、あまりにも悲惨な体験のためかほとんど語られていない。我々が語り継いでいかなければならない」

     今年7月、85歳で亡くなった演出家の浅利慶太さんが、劇団四季の「ミュージカル異国の丘」について語った言葉だ。題材となったのが「シベリア抑留」である。

     73年前の1945年8月23日、旧ソ連の指導者スターリンの命令によって始まった。

     厚生労働省の推計によると、旧満州(現中国東北部)や樺太(サハリン)にいた元日本兵ら約57万5000人が「捕虜」として連行され、収容所で強制労働させられた。最長11年に及び、栄養失調や病気などで約5万5000人が亡くなった。

     実態解明は進んでいない。正確な死亡情報が判明しているのは約4万人で、約1万5000人については確定されていない。

     長く続いた東西冷戦のため当時のソ連の協力を得ることができず、遺骨収集が始まったのは91年になってからだ。厚労省は毎年、遺骨収集を行っているが、これまで収集できたのは約2万体にすぎない。

     8月は広島と長崎の原爆の日、終戦記念日と、現代史の大きな悲劇があり、関心が高まる。

     一方、シベリア抑留はこれほど大きな犠牲が生じたにもかかわらず、帰国者への偏見などもあり、調査や研究が立ち遅れた。もっと問題意識が広く共有されるべきだ。

     抑留体験者らは8月23日を「シベリア抑留の日」と定め、2003年以来、東京の千鳥ケ淵戦没者墓苑で追悼の集いを開いている。きのうも遺族や国会議員ら約200人が参列したが、体験者は4人にとどまった。

     体験者の高齢化は年々進む。記憶の風化が憂慮される。シベリア抑留者支援・記録センターによると平均年齢は95歳になり、1万人を切ったという。

     体験者らは国主催の追悼を求めているが、国側は8月15日の全国戦没者追悼式に抑留犠牲者も含まれているという立場だ。しかし、シベリア抑留は、戦争が終わってから起こった悲劇であり、戦没者とは異なる。

     遺骨収集を含めた実態解明を急ぎ、体験を次代へ継承していく責任は国が負うべきだ。

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