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炎のなかへ

/239 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

その夜(74)

 直邦が走ってくると、タケシの手を引いていった。

「錦糸公園もみんな焼けちゃったね。だけど、時田の家のみんなは元気だ。やったね、タケシ兄ちゃん」

 公園の広場までやってきた。コンクリートタイルのあちこちに、煤(すす)だらけの避難民がへたりこんでいた。噴水の縁にもたれるように焼けだされた人たちが集まっている。誰の顔にも感情はなかった。煤で黒い顔のなか、血走った目だけが白く浮かんでいる。あまりにもひどいものをたくさん見過ぎて、感情は灰になって燃え尽きてしまったのだ。ここにいる誰もが戦争のほんとうの意味を身体(からだ)で理解していた。登美子がいった。

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