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モリシの熊本通信

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精力的な活動が地域をつなげる /佐賀

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 先日、熊本地震関係のイベント登壇のため、宮城県気仙沼市を訪れた。イベントは、同市のシェアオフィス「co-ba(コーバ)KESENNUMA」の志田淳さん(26)が企画したもの。志田さんが今年、熊本に滞在したことをきっかけに、筆者との交流がスタート。今回のイベント開催に至った。

 同市に生まれた志田さんは、高校卒業後に神奈川県の大学へ進学。学業と音楽バンドに打ち込み、充実した日々を送っていた大学1年時、東日本大震災が発生した。同市には巨大津波が押し寄せ、大きな火災も発生。気仙沼市のホームページによると、9500世帯が被災し、人的被害は1356人にのぼった(2017年6月現在)。

 発災から3週間後、志田さんは地元に戻った。到着したのは夜。街にあかりはなく、暗闇に包まれていた。ヘドロや埃(ほこり)が混じったような、かいだことのない臭いが鼻をついた。実家は、津波で全壊していた。自分が知っている気仙沼は、そこになかった。いてもたってもいられず、しばらくはボランティアに精を出した。被災者の自宅の片付けをしたり、避難所をいくつか回ったり。「地元の力になりたい」との一心だった。

 関東に戻ると、気仙沼との「温度差」に驚いた。「このままでは震災がすぐに風化してしまう。関東の人たちに現状を伝えなければ」。危機感を覚え、すぐに動き出した。気仙沼の写真家らに声をかけ、2012年3月、発災直後の被災地の写真を集めた展覧会を、東京で開いた。

 大学卒業後は、気仙沼にUターン。全国から集めた古着のフリーマーケットなど、被災地を元気づけるイベントを開催してきた。毎月11日の夜に仲間たちと集まる「11BACK(イレブンバック)」という、コミュニティー形成を目的にしたイベントは、今月で36回目を迎えた。

 精力的に活動するうちに、気仙沼と全国の各地域との間に、つながりができていった。近年は災害が全国いたるところで発生している。その度に、各地と情報交換し、経験を共有。復興や防災に大きく貢献している。

 シェアオフィスで開かれたイベントには、気仙沼や周辺自治体から参加者が集った。皆、筆者の話に真剣に耳を傾けてくれ、その後は活発に議論を交わした。こうしてまた、志田さんの力で気仙沼につながりができた。


 ■人物略歴

田中森士(たなか・しんじ)

 マーケティング会社「クマベイス」(熊本市)代表取締役、ライター。熊本県立高常勤講師、全国紙記者を経て古里の熊本市で起業した。熊本地震後は、復興支援活動に携わりながら、執筆やイベントを通し、被災地の現状を伝えている。モリシは愛称。熊本市南区在住。

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