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新技術のゲノム編集を使って遺伝子改変した動植物や微生物をどう規制していくか。生物多様性保護の観点から議論した環境省の有識者検討会が原案を大筋でまとめた。
ゲノム編集生物の一部を従来の規制対象からはずす一方、情報の届け出を求める方針だ。
親委員会にかけて今年度中に最終結論を出すというが、検討会の開催はわずか2回。生態系への影響のリスクをきちんと評価したとはいえず、市民にも情報は伝わっていない。新しい技術であることを思えば、より丁寧で慎重な議論が必要だ。
ゲノム編集は従来の遺伝子組み換えに比べ簡便で精度が高いことが特徴だ。生物のDNAを狙った位置で切断でき、その結果、特定の遺伝子を壊した生物ができる。研究レベルでは筋肉量の多いマダイや収量の多いイネなどがこの手法で作られている。一方、ここに望みの外来遺伝子を組み込むこともできる。
現在、遺伝子組み換え生物は生物多様性を守る「カルタヘナ法」で規制されている。検討会はこの法律に照らしてゲノム編集技術を整理し、外来の遺伝子を入れた生物を従来通り規制対象とする一方、遺伝子を壊しただけの生物を規制の対象外とする方針を示した。
遺伝子が壊れたことによる新種は自然界にもある、という理屈だ。
研究者や産業界にとっては、規制に対応する費用や手間がかからず、歓迎する声はあるだろう。この分野の国際競争を意識する政府の意図も反映されている。
だが、カルタヘナ法はゲノム編集登場以前の法律で、この範囲だけで考えるのは限界がある。壊された遺伝子によっては思いもよらない生物ができないか。自然界では淘汰(とうた)されるような生物を増やしてしまわないか。狙いとは別の遺伝子を壊した場合の影響はどうか。
環境省が示す大枠に従うだけでなく、関係省庁や学会などでもっと議論を深めてほしい。
ゲノム編集生物をどう規制するかは国によっても判断が分かれる。その違いの背景を分析する必要もあるだろう。
食品としての規制については厚生労働省が今後検討する。あくまで安全性を重視した議論が必要だ。