子どもの自殺

しんどい気持ちLINEで伝えて 新学期控え、いのち守る相談強化

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 多くの地域で新学期が始まる9月1日前後に子どもの自殺が急増することから、さまざまな支援団体が「一人で抱え込まずに伝えて」と呼び掛けている。電話に加え、子どもや若者の身近なコミュニケーション手段である会員制交流サイト(SNS)での相談対応も広がっている。【熊谷豪、藤沢美由紀】

 「さみしいよー」「生きてる意味わかんないたすけて」。若い女性を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」(東京都)の事務所で、パソコン画面に無料通信アプリ「LINE(ライン)」の短いメッセージが届いた。「何かあったのかな。大丈夫だったら聞かせてほしいな」。10~30代の女性スタッフが言葉を選びながら返信する。

 電話に比べ小学校高学年~中学生の比率が高い。自殺願望や家族からの虐待、学校でのいじめなど、最近は月1000件前後の声が届く。「状況や気持ちを口で説明するのが苦手な子も相談しやすいのでしょう」と広報担当の竹下奈都子さん(30)。

 東京都の加藤郁美さん(23)は「LINE相談に救われた」と振り返る。小中学校でいじめを受け、高校でも人間関係のトラブルから教室に入れなくなった。21歳の時、「消えたい」との思いにとらわれたが、電話相談で知らない人に話すのは勇気が要った。「冷たい言葉が返ってくるかも」と怖かった。「でもLINEなら嫌な目に遭ってもブロックできる」。気が楽になり、相談相手を信頼できたという。

 BONDの竹下さんは「学校へ行きたくない」という相談には、登校できそうな方法を一緒に考える。ただ、いじめや死にたいほどの悩みには「無理に行かなくていい」と助言する。「しんどいという自分の気持ちのサインに気付けたことは状況を変える可能性があるということ。言葉にして伝えてもらえたら」

 ただ、SNSの相談体制には課題もある。NPO法人「国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センター」は3月、神奈川県座間市の9人殺害事件を受けた再発防止策の一環として、国の補助でLINE相談を試行した。子どもからは「電話だとパニックになるけど、文字だと考えを整理できる」と好評だったが、システム維持に月15万円かかり、4月以降は続けられなかった。北條達人所長は「費用がかからないシステムがあれば」と残念がる。

 相談対応の期間を長くする取り組みも広がっている。2015年の自殺対策白書は「18歳以下は9月1日の自殺が最多」と指摘したが、統計では8月下旬から9月上旬にかけて高い水準が続く。支援団体には夏休みが半分過ぎると「学校が始まるのが憂鬱」といった相談が増えるという。

 NPO法人「チャイルドライン支援センター」は、通常は週1、2回のネット相談を、今年は9月1日前後の1週間実施することにした。電話の受付時間も延長する。国の自殺総合対策推進センターは「9月1日という特定の日に限らない取り組みが必要だ」としている。

鹿児島、熊本でも

 九州・山口でも、自治体がSNSを活用する動きが出ている。鹿児島県は今年初めてLINEで悩み相談を受け付けており、9月11日まで県立高や公立中の生徒を対象に実施する。熊本市も8月24日~9月6日、全ての市立中高などの生徒を対象に初めてLINEの相談窓口を設置。いずれも専門家が応対する。【柿崎誠】

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