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炎のなかへ

/240 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

 タケシは噴水の縁にもたれうとうとした。真夜中に空襲警報で叩(たた)き起こされ、ずっと駆け続けだった。もう朝が近いはずだが一睡もしていない。直邦は千寿子の胸に抱かれ、すでに深い眠りに落ちている。タケシはふわふわと手足が軽く感じられるほど疲れ切っていた。ぬるい温泉のような噴水の水のせいもあるのだろう。だいぶ水苔(みずごけ)くさい濁った水だけれど、これで炎の竜巻から身を守れるのなら、泥だろうが腐った水だろうがかまわなかった。どんなに汚れても苦しくても、生きていることには代えられない。

 錦糸公園の周りをとり囲む建物の炎はしだいに収まりつつある。公園の木々の間を流れるのは火事が消えるときの白っぽい煙だった。

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