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炎のなかへ

/240 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

その夜(75)

 タケシは噴水の縁にもたれうとうとした。真夜中に空襲警報で叩(たた)き起こされ、ずっと駆け続けだった。もう朝が近いはずだが一睡もしていない。直邦は千寿子の胸に抱かれ、すでに深い眠りに落ちている。タケシはふわふわと手足が軽く感じられるほど疲れ切っていた。ぬるい温泉のような噴水の水のせいもあるのだろう。だいぶ水苔(みずごけ)くさい濁った水だけれど、これで炎の竜巻から身を守れるのなら、泥だろうが腐った水だろうがかまわなかった。どんなに汚れても苦しくても、生きていることには代えられない。

 錦糸公園の周りをとり囲む建物の炎はしだいに収まりつつある。公園の木々の間を流れるのは火事が消えると…

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