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岡崎 武志・評『こころ傷んでたえがたき日に』『蒐める人』ほか

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今週の新刊

◆『こころ傷んでたえがたき日に』上原隆・著(幻冬舎/税別1600円)

奥歯を噛(か)みしめ、悲痛をこらえて生きる多くの無名人がいる。上原隆は『友がみな我よりえらく見える日は』ほか、彼らが地面に落とす影を見つめ、ため息のような声を拾って伝えてきた。

 新作『こころ傷んでたえがたき日に』は、その総決算ともいうべき22編を収める。「ああ、なんてみじめな」は、妻が浮気をしても離れがたく暮らす男の苦渋を描く。60を過ぎ、風呂なしアパートに一人住まいの男性は、川柳の投句が趣味。「俺なんか貧乏人の句だくさん」とほろ苦い。

 盲導犬と共に生きる盲人女性は、運命を受け入れ、「見えないなんて気にならなくなるんです」とほがらかだ。著者は感動を煽(あお)ることも、意味付けもしない。みんな生きていることそのものに意味がある、と読者は知るだろう。

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