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縮む日本の先に

安心のために/2 世間話で早期発見 住民の中へ、看護師飛び込む

「テレビが話し相手」とこぼす高齢女性と談笑する中上奈津恵さん(右)。奥は医師の野村信介さん=奈良県山添村大西で

 奈良県北東部の山あいにある人口約3600人の山添村。茶畑に囲まれた古い平屋の建物で、地元の看護師、中上(なかうえ)奈津恵さん(42)が数人のお年寄りと談笑していた。「本当に、元気な人が急に亡くなっていくのよねぇ」。てきぱきとコーヒーやお茶を用意しながら、とりとめのない世間話に笑顔で相づちを打つ。

     地域活動を通じ、病気の予防や早期発見を目指す「コミュニティナース」の活動の一環だ。集いの場を設けたり、地域内を巡回したりと活動の形はさまざまだ。中上さんは村内の介護施設に勤務する傍ら、6月から毎週2、3回、午前中にボランティアでお年寄りと向き合う。

     2009年、結婚を機に県西部の市街地から夫の出身地の山添村に移り住んだ。近年、地域の結び付きが強い山村でも、住民同士のつながりが希薄化していると危機感を募らせた。

     マイカーの浸透で住民の行動範囲は郊外のスーパーや遠くの大病院まで広がった。ところが地元の個人商店など、住民が日常的に顔を合わせる場が減り、互いの情報にどんどん疎くなっていく。同じ問題意識から、今春に休業状態だった近くの診療所を再開させた医師の野村信介さん(61)と共に毎週の集いを始めた。

     この日、近所で1人暮らしの福山愛子さん(84)が訪れた。「知ってる人がどんどん亡くなっていく。今は一日中、テレビが話し相手なんよ」。かつては健脚自慢だったが、最近は閉じこもりがちという。野村さんは「おばちゃん、もっと出歩かなあかんよ。なっちゃん(中上さん)が迎えに行くからね」。福山さんは「1人暮らしは慣れていてもやっぱり寂しい。心配してくれるんはうれしいわ」と顔を上げた。

     集いで隣同士で座った藤田和孝さん(77)と藤井博さん(80)。旧知の間柄だが、膝を交えてゆっくり話をするのは約30年ぶりだ。藤井さんは「顔を合わせるのは大事なこと。忘れていたことを思い出せるような気持ち」と笑った。

     中上さんは病院勤務や看護学校教員を経て、今春にコミュニティナースとしての専門研修を受けた。小学1年生の長男(6)を抱えて子育てに忙しいが、その中でも地域に貢献できる活動がしたいと考えた。

     中上さんは「地域の中に入って住民と医療の壁を取り払いたい」と言う。地域医療といっても、「健康相談」や「健康診断」という看板を掲げると住民はなかなかついてこない。「田舎では、いきなり地域医療と言っても身構えてしまう。いろいろな話をすることで、地道に健康を支えたい」。そんな素朴な思いが活動の原動力だ。【稲生陽】=つづく

    暮らし続ける支援、不可欠

     日本の人口構造上、2025年は一つの節目だ。戦後のベビーブーム期に生まれた団塊の世代(1947~49年生まれ)がすべて75歳以上の後期高齢者になる。

     この時期に備え、国は、病気になったり介護が必要になったりしても住み慣れた地域で暮らし続けられる環境整備を進めている。

     介護施設に入らなくても必要な時に医療や介護サービスを利用できる体制が重要なのは言うまでもないが、安心して暮らすためには住まいの確保や予防、生活支援も欠かせない。中上さんらコミュニティナースの活動は、主に予防の面で果たす役割が大きい。

     25年まで10年を切ったが、十分な体制整備は見通せておらず、地域ごとの地道な取り組みが求められている。

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