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炎のなかへ

/244 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

「戦後はそれはたいへんだった。とにかく貧乏で、たべものが足りなくてねえ。でも、うちのお父さんが帰って、よっさんも元気だったし、またメリヤス編みの町工場を始めたの」

 あの頃の編み機の音が懐かしかった。女学校を卒業してから、登美子も帳簿の仕事を手伝ったのである。

「高度成長が終わる頃、メリヤス編みはすっかりすたれてしまってね。工場と近くにあった倉庫の跡地に、マンションを建てたの。時田家の家業は今ではマンション経営よ。不動産なんて縁がなかったんだけど、亡くなった弟の直邦が意外に目端が利いてね」

 もう七十年以上になるのか。あの夜、炎のなかを逃げ回っていた七人のうち、今生きているのは自分が最後になってしまった。遠いとおい昔のようにも、つい先日のようにも思える。エリーが涙目で微笑(ほほえ)んでいった。

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