メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

炎のなかへ

/244 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

おわりに(2)

「戦後はそれはたいへんだった。とにかく貧乏で、たべものが足りなくてねえ。でも、うちのお父さんが帰って、よっさんも元気だったし、またメリヤス編みの町工場を始めたの」

 あの頃の編み機の音が懐かしかった。女学校を卒業してから、登美子も帳簿の仕事を手伝ったのである。

「高度成長が終わる頃、メリヤス編みはすっかりすたれてしまってね。工場と近くにあった倉庫の跡地に、マンションを建てたの。時田家の家業は今ではマンション経営よ。不動産なんて縁がなかったんだけど、亡くなった弟の直邦が意外に目端が利いてね」

 もう七十年以上になるのか。あの夜、炎のなかを逃げ回っていた七人のうち、今生きているのは自分が最後になってしまった。遠いとおい昔のようにも、つい先日のようにも思える。エリーが涙目で微笑(ほほえ)んでいった。

この記事は有料記事です。

残り606文字(全文961文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 新たに25人感染 ほとんど経路不明 クルーズ船下船者が陽性 新型肺炎

  2. 金沢市内の男子中学生陽性 感染者の家族 症状なし、学校は休校に 新型肺炎

  3. 新型肺炎対応の医師ら「バイ菌扱い」 子どもに登園自粛要請 日本災害医学会が抗議

  4. クルーズ船下船後に女性が陽性、発熱 初のケース 栃木県発表 新型肺炎

  5. 新型コロナ「花見川区の中学校教諭り患」「安易に校名広げない配慮を」 千葉市長がツイート

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです