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日本中を沸かせた金足農 完全燃焼した「9人野球」

 秋田の夏は、やはり敢闘(竿灯)賞だったか、なんてね。いきなり出来の悪いだじゃれで申し訳ないが、この夏、甲子園を沸かせた秋田代表の金足農高。決勝で大阪桐蔭の強力打線の前に敗れたものの、大会を盛り上げた見事な準優勝だった。

     今回は第100回記念大会。秋田の代表が決勝まで勝ち上がったのは1915年の第1回大会の秋田中(現秋田高)以来、103年ぶりというのもなにやら因縁めく。

     秋田中は延長十三回、京都二中(現鳥羽高)に1-2で惜敗したのだが、第1回大会が行われた舞台は大阪府豊中市の豊中グラウンド。甲子園球場が大会の舞台となるのは24年の第10回大会からなので、今回の金足農ナインは甲子園球場での決勝に勝ち進んだ最初の秋田県勢となる。

        ◇    ◇

     「マウンドは俺の縄張り 死ぬ気の全力投球」--。金足農躍進の原動力となった吉田輝星投手の帽子のツバの裏側には、こう書かれていた。

     2年までは「覚悟」の2文字を書いていたというが、表現が具体化した。最後の甲子園に向け、エースの決意がうかがえる。ピンチを招く度、帽子を脱ぎ、決意の文字を見て勇気をふるい起こしたに違いない。

     秋田大会5試合で636球、甲子園でも準決勝の日大三高戦まで5試合、749球を一人で投げ抜いて迎えた大阪桐蔭との決勝戦。

     一回、自らの暴投で先制点を許すと四回には大阪桐蔭の1番打者に甲子園で初の本塁打を打たれた。下半身に力が入らなくなった五回にも集中打を浴び、この回だけで6失点。

     「もう投げられない」。五回途中、マウンドに激励にきた菅原天空二塁手に打ち明けた。5イニング132球で降板を監督に直訴し、“縄張り”を六回から打川和輝三塁手に譲った。

     秋田大会から通算して11試合、93イニング。投球数は1517球でプロ注目の右腕の夏はピリオドを打った。

        ◇    ◇

     金足農の「9人野球」も称賛に値する。秋田大会から甲子園決勝までの11試合をすべて同じ9人で戦い続けた。

     継投が当たり前となり、1人の投手で投げきること自体、珍しくなったが、金足農の場合、野手も下級生の控え選手の出番は全くなかった。

     注目したいのは9人のうち、同じ中学の出身は菊地亮太捕手と菅原天二塁手の2人だけ。秋田、潟上両市と井川町内にある8中学からの寄せ集めだ。

     中学3年で、軟式チームを卒業した吉田選手らは硬式ボールに慣れるため、約半年間、秋田北リトルシニアに在籍した。

     中学時代から注目されていた吉田投手が金足農に進むと知り、打川、菅原天選手ら6人が金足農に進学。これが「9人野球」の原点となった。

     「可美(うま)しき郷(さと) 我が金足 霜しろく 土こそ凍れ」--金足農の校歌の出だしだ。土も凍る寒冷地に加え、公立の農業高校など、野球部強化の苦戦材料は山ほどあるが、9人は吉田投手を中心に見事に結束し、高校野球の歴史に忘れがたい足跡を刻んだ。(立教大社会学部講師・中島章隆)

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