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15歳のニュース

「学校に行きたくない君へ」 逃げていいと言うけれど 著名人に直球質問 「不登校新聞」が編集

「学校に行きたくない君へ」を手にする不登校新聞の石井志昂編集長。表紙のイラストは西原理恵子さんが描き下ろした

 夏休み明けの9月1日前後は、学校やクラスメートとの関わりが再開する。不登校の現状を発信し続け、今年で創刊20周年を迎(むか)えた「不登校新聞」を発行するNPO法人がこの夏、不登校の当事者や経験者が著名人にインタビューした「学校に行きたくない君へ」を編んだ。学校に行けないことを否定せず、さまざまな生き方を提案している。【毎日新聞東京社会部・金秀蓮(キムスリョン)】

    さまようことが自分を豊かに 雨宮処凛さん

    孤独のときこそ成長のチャンス 横尾忠則さん

    「現実逃避」していい リリー・フランキーさん

     9月1日前後は子どもの自殺が増える傾向(けいこう)にある。不登校新聞は、NPO法人「全国不登校新聞社」(東京都北(きた)区)が発行している。創刊当時から夏休みなど長期の休み明けの子どもに向けて「学校に行くのがつらければ休んでいい」というメッセージを送り続け、子どもの自殺が増えることに警鐘(けいしょう)を鳴らしてきた。「学校に行きたくない君へ」は、出版元のポプラ社から「9月1日を前に子どもたちのために何かできないか」との相談を受け、不登校新聞に掲載(けいさい)したインタビュー記事を基に3年がかりで完成させた。

     取材をしたのは子ども若者編集部の記者で、10~30代の不登校経験者たちだ。「不登校をしていて、この先、生きていけるか不安です」「『苦しいときは逃(に)げていい』と言われるけれど、どこにも逃げる場所がありません」など、記者自身がこれからの人生をどう生きればいいのか、著名人に悩(なや)みを真剣(しんけん)にぶつけた。

     「依存(いそん)体質で、さまよっている」と話す記者に、作家の雨宮処凛(あまみやかりん)さんは「さまようことが自分を豊かにする。いろんな表現や話に触(ふ)れて常に勉強しているわけだから」と答え、「絵を描(か)く上で大切なことは」と問われた美術家の横尾忠則(よこおただのり)さんは「一人の世界に没頭(ぼっとう)し、孤独(こどく)を恐(おそ)れてはいけない。孤独になっているときこそが成長するチャンスだ」と説く。

     リリー・フランキーさんは不登校の子どもや親へのメッセージを「まわりからは『現実逃避(とうひ)だ』なんて言われるけどいいんだよ。現実のことばっかり考えても何も新しいものは生まれない」と結んだ。

     不登校新聞の石井志昂(いしいしこう)編集長(36)は、自身も中学2年から学校に行けなくなり、フリースクールに通い、不登校新聞のスタッフになった経歴がある。石井編集長は「当事者が本気でぶつける質問に、著名人が本気で答えてくれた。ここに生き方のヒントがある。本のタイトルには『大丈夫(だいじょうぶ)だよ。君は生きていける』という言葉を続けたい」と話している。価格は1512円(税込(ぜいこ)み)。

    9月1日が突出

     内閣府が2015年にまとめた「自殺対策白書」(16年から厚生労働省が担当)によると、1972~2013年の42年間に自殺した18歳以下の小中学生や高校生計1万8048人について日付を調べたところ、9月1日が131人で突出(とっしゅつ)していた。4月11日99人、4月8日95人、9月2日94人、8月31日92人などと続いており、長い休み明けに集中する傾向(けいこう)が見られた。

     白書は、長い休み明けに自殺が増える背景について「生活環境(かんきょう)などが大きくかわる契機(けいき)になりやすく、大きなプレッシャーや精神的動揺(どうよう)が生じやすい」と分析(ぶんせき)した。不登校新聞は当時から緊急(きんきゅう)号外を発行するなどして、「学校に行くのがつらければ、まずは休んでください」とのメッセージを発信してきた。

     また、厚労省の統計で昨年1年間に亡くなった15~19歳1161人の死因は、自殺が458人で最も多く、39.4%を占(し)めた。不慮(ふりょ)の事故(234人)、がん(125人)、心疾患(しんしっかん)(62人)などを上回る若者の命が、自殺によって失われている。

     9月1日前後は、さまざまな支援(しえん)団体が電話や会員制交流サイト(SNS)での相談対応を強めている。


     ■KEY WORDS

     【不登校新聞(ふとうこうしんぶん)】

     1998年5月1日に創刊し、「日本で唯一(ゆいいつ)の不登校専門紙」をうたう。不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場し、関連するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、有識者・文化人のインタビューなどを掲載(けいさい)している。タブロイド判8ページで毎月2回発行。有料のウェブ版もある。購読(こうどく)料は紙版、ウェブ版ともに820円(税込(ぜいこ)み)。問い合わせ先(03・5963・5526)。

     【雨宮処凛(あまみやかりん)さん】

     1975年生まれ、北海道出身。作家。非正規雇用(ひせいきこよう)などで不安定な生活を強(し)いられる若者の「生きづらさ」をテーマに執筆活動(しっぴつかつどう)を続けてきた。「反貧困ネットワーク」世話人。著書に「14歳からわかる生活保護」「14歳からの戦争のリアル」など。

     【横尾忠則(よこおただのり)さん】

     1936年生まれ、兵庫県出身。美術家、グラフィックデザイナー。ポスター作品で注目され、国際的に評価される。2012年には神戸(こうべ)市に横尾忠則現代美術館がオープンした。

     【リリー・フランキーさん】

     1963年生まれ、福岡県出身。俳優、小説家、写真家、イラストレーター、音楽家などとして多面的に活躍(かつやく)する。小説「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」はベストセラーになった。今年5月のカンヌ国際映画祭で最高賞に輝(かがや)いた是枝裕和監督(これえだひろかずかんとく)の「万引き家族」には父親役で出演した。

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