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今週の本棚

磯田道史・評 『文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ』=鈴木董・著

 (山川出版社・2160円)

 たった一冊で全世界の人類史を語る本など、そうそう書けるものではない。古くはトインビーがそれをやった。文明史である。近年では、ハンチントンが「宗教」、トッドが「家族」、梅棹忠夫が「生態」を切り口に、人類を幾つかの「文明」にわけて人類史を語った。しばらく、そんな壮大な文明史を書く学者は日本に現われまいと思っていたが、本書が出た。著者はオスマン帝国の研究の鈴木董(ただし)氏。かつて私はこの人に会って驚いた。元来、法学部の出身で中東史が専門。ところが日本近世の武士の職制にも詳しかった。オスマン帝国を説明するにも「これは日本の児小姓(こごしょう)に近い」などと説明された。インド史、ヨーロッパ史、インカ史、何を尋ねても適切な答えがかえってきた。この国の文学部の歴史学は、国史・東洋史・西洋史に分断され、スケールの大きな歴史家は育ちにくい。本書は例外的な本だ。

 本書が人類を文明に切り分けるメスは2本ある。文字と組織だ。人類の文字は、発生・伝播(でんぱ)でいえば、フェニキア系文字・アラム系文字・ブラフミー系文字・漢字派生文字。中南米の文字をいれれば5系統あるという。人類の世界は使用する文字で、ラテン文字、ギリシャ・キリル文字、アラビア文字、ブラフミー文字(梵字(ぼんじ))、漢字の5大文字世界にわけられる。著者はこれらを「文字圏・文字世界」とよんで分析する…

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