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なるほドリ 東京電力福島第1原発事故の汚染水処理(おせんすいしょり)で、「トリチウム水」という言葉を聞いたよ。
記者 汚染水を浄化(じょうか)しても除去できない放射性トリチウムを含む処理水のことですね。福島第1原発では敷地(しきち)内のタンクにたまり続けていて、政府や東電が処分方法をどうするか検討しています。
Q トリチウムってどんな物質なの?
A 水のもととなる水素の仲間で、通常、水素の原子核(げんしかく)は陽子(ようし)1個でできていますが、トリチウムは陽子1個と中性子(ちゅうせいし)2個でできており、三重水素(さんじゅうすいそ)とも呼ばれます。放射性物質の量が半分になる半減期(はんげんき)は12・3年です。
Q 原発事故の処理水だけにあるの?
A 大気中の酸素(さんそ)や窒素(ちっそ)が宇宙からの中性子などに反応してもできます。経済産業省の資料によると、自然界でも年約7京(けい)ベクレルが作られ、日本で1年間に降る雨の中には約223兆ベクレルが含まれます。通常の原発の運転でも冷却水などにあります。福島第1では、建屋に流れ込む地下水や溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の冷却水の中に発生しています。
Q なぜ除去が難しいの?
A 他の放射性物質は、専用の処理設備でろ過したり、吸着させたりすると基準値以下まで除去できるとされます。トリチウム水は沸点など普通の水と同じような性質を持つため、分離が非常に難しいのです。
Q 放射性なら健康への影響が心配だな。
A そうですね。ただトリチウムが出す放射線のベータ線はエネルギーが弱く、飲んだとしてもほとんど排出され、人体への影響は放射性セシウムの数百分の1とされます。各国の規則に基づき、世界の原発ではトリチウムを含む水を基準値以下に薄めて海に流すなどしており、経産省によると国内では福島事故前の5年平均で年間約380兆ベクレルが海洋放出(かいようほうしゅつ)されていました。(科学環境部)
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