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岡崎 武志・評『原民喜』『築地市場 クロニクル完全版1603-2018』ほか

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今週の新刊

◆『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子・著(岩波新書/税別860円)

 1951年3月13日夜、鉄道自殺を図った『原民喜』。広島・原爆体験を描いた不朽の名作『夏の花』の作者である。『狂うひと』で各賞を総なめにした梯久美子が次に挑んだのは、「死と愛と孤独の肖像」(副題)だった。

 東京の空襲を避けるために戻っていた実家は爆心地に近かったが、原は助かった。家業は裕福で、頑丈な家に育ったからだ。極端に無口で、妖精のような少年が地獄を見た。それは宿命であった。

 原の唯一の幸せは、貞恵という絶好の伴侶を得たこと。原の才能を信じ励まし、ほとんど母代わりに寄り添ったが、33歳で病没。父、姉の死を見つめた繊細な精神が、文学に結晶する過程を、著者は作品と証言から見事に叙述する。小さい本だが充実している。

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