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余録

アイヌ語で地震はシリシモイエという…

 アイヌ語で地震はシリシモイエという。「シリ」は地、次の「シ」は自分、「モイエ」は動かすで、地が自らを揺らすということである。アイヌの人々は経験した自然の災害を伝承や神話によって記憶してきた▲それが地名をなしているところもある。砂防学の専門家、南哲行(みなみ・のりゆき)さんの論考によると、たとえば札幌市の豊平はトイ・ピラ(崩れた・崖)、弟子屈(てしかが)町の美留和(びるわ)山の名の由来をたどるとペルケ・ヌプリ(裂けた・山)に行き着くという▲こんな地名や伝承が過去の災害や危険箇所を推定する手がかりになると南さんは指摘している。そんな気の遠くなるような時間と変動を経てきた北の大地が、22年前に改定した震度階級で初めて見せた震度7のシリシモイエだった▲震源に近い厚真(あつま)町を映した空撮は、まるで緑の丘陵を長く大きなへらで削り取ったように赤茶色の断面をさらしていた。まさに「崩れた崖」「裂けた山」である。その下に人がのみ込まれて助けを待っているかと思えば胸がつぶれる▲地の揺らぎが昔なら考えられない広い地域に被害を及ぼすのも現代である。北海道全域から明かりを、日常生活を、情報を奪い去ったかつてない広域停電だった。さらに新千歳空港の閉鎖、鉄道のまひが道外との人の往来を遮断した▲近畿地方の台風被害の経験を分かち合う間もなく、今は安否不明の人々の一刻も早い無事救出を祈るだけである。息つく間も与えてくれぬ自然の無情には、災害列島の住民のスクラムで応じるしかないだろう。

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