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北海道で6日未明に発生した地震で、停電によって多くの工場が操業停止に追い込まれたほか、コンビニエンスストアも休業するなど影響が広がった。被災地域には工場などが集積。停電は1週間以上続くとの見方もあるだけに、経済活動への影響が懸念されている。【今村茜、柳沢亮、藤渕志保、小坂剛志】
「停電が解消しないことには復旧の見通しが立たない」。乳製品の大部分を道内で製造する雪印の広報担当者はそう頭を抱えた。同社の道内全7工場は停電で冷蔵できなくなるなどして操業を停止。森永乳業も道内4カ所の製造拠点が止まり、全国への発送ができない状態となっている。アサヒ、キリン、サッポロのビール各社も操業を停止した。
製紙業界では、王子ホールディングス(HD)の4工場が止まり、再開の見通しは立っていない。段ボール原紙や包装紙、新聞紙などを製造して全国に納入しているが、同社は「停電が長期化すれば、種類によっては供給できなくなる可能性がある」と話す。
新日鉄住金室蘭製鉄所内にある三菱製鋼室蘭特殊鋼では同日午前4時ごろ、停電で熱を持った材料を冷却できず、余熱で潤滑剤に引火し火災が発生。約6時間後に鎮火した。設備に大きな被害はなかった。
一方、コンビニのローソンは停電や品不足などで道内の半数弱に当たる約300店舗が一時休業した。同社は「停電で冷蔵・冷凍品を売ることができなくなり、品切れもあってやむを得ず休業した」と説明。セブン-イレブンは道内の970店舗が停電したが、一部店舗を除いて営業している。ただ、販売しているのは水やカップラーメンが中心。同社は「できる範囲で営業を続けている」と話した。
物流では、道路状況の悪化や交通網の混乱で影響が出ている。日本郵便が道内の一部の郵便局で営業を停止し、道内宛ての宅配便「ゆうパック」などの受け付けを取りやめた。北海道発着の郵便物の配達も大幅に遅れる見通し。ヤマト運輸は6日午後2時に北海道から全国への発送の受け付けを停止した。全国から北海道への配送は「クール宅急便」などを除き受け付けているが、配送は大幅に遅れる見通しだ。佐川急便や日本通運も道内の集配を停止した。
電機メーカーも影響を受けた。パナソニックは千歳、帯広の両市にある車載向け電子部品工場の稼働を停止した。京セラも携帯電話の基地局向け電子部品やスマートフォンを生産している北見工場(北見市)で操業を停止。同社は「振り替え勤務などで生産に影響が出ないようにしたい」としている。トヨタ自動車の子会社「トヨタ自動車北海道」(苫小牧市)の工場も操業を停止した。
他電力でも大停電リスク
地震の影響で北海道電力(北電)の火力発電所が全て緊急停止し、全道295万戸が停電となったが、「地震で大規模停電が起きる可能性は他の電力会社でも否定できない」(大手電力関係者)のが現状だ。今回は悪条件が重なり大規模停電に追い込まれたが、停電を未然に防ぐ抜本的な解決策は見つからず、同様のトラブルは需要の少ない電力会社ほど起きる可能性があるという。
電気事業連合会によると、電力大手が管内全域で長期にわたり停電となるのは、戦後に現行の10電力体制になって初という。東日本大震災で東北電力管内と東京電力管内で計約870万戸が停電したが、管内全域ではなかった。
北電によると、6日の地震発生時の道内の電力需要は310万キロワット。地震を感知し緊急停止した苫東厚真火力発電所の出力は165万キロワットで需要に占める割合が高く、一瞬で電力需給のバランスが崩れ、他の火力発電所も連鎖的にダウンした。
これは北海道内の電力需要が5日のピーク時でも380万キロワットと少ないのが原因で、仮に165万キロワットの発電所が緊急停止しても、ピーク時の需要が5000万キロワット台の東京電力ならば相対的な影響は少なく、大停電には至らないという。逆にピーク時需要が400万~500万キロワット台の四国電力や北陸電力などは北電同様、165万キロワットでも電源喪失の負荷が大きく、大停電となるリスクが高い。【川口雅浩】
◆主な企業への被害と対応
(1)6日当日の影響
(2)対応や今後の見通し
ローソン
(1)約300店舗が一時休業
(2)道内で保管中の飲料とカップ麺を全店に納品
日本郵便
(1)道内宛てゆうパック受け付け停止
(2)配達は大幅に遅れる見込み
雪印メグミルク
(1)7工場が操業停止
(2)他地域で製造した乳製品などを活用
王子HD
(1)4製紙工場が操業停止
(2)1週間程度は在庫でカバー
京セラ
(1)スマホ工場が稼働停止
(2)振り替え勤務で生産を維持