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北海道震度7

土砂崩れ、山里一変「不気味な音響いた」

地震による土砂崩れに巻き込まれた建物=北海道厚真町で2018年9月6日午前8時31分、本社機「希望」から佐々木順一撮影

 6日未明、震度7の強い揺れに見舞われた北海道厚真町。広範囲で山の斜面が崩れて赤い土がむき出しになり、山裾に流れた土砂や樹木は住人が寝静まっていた住宅をのみ込んだ。のどかな山里の風景は一変し、難を逃れた住民はぼうぜんとした。気象庁によると、同町を含む北海道胆振地方は7日から8日にかけてまとまった雨が降ると予想され、余震も続いている。停電と断水が続くなどライフラインの被害も深刻で、避難所に身を寄せた人たちは明日からの生活への不安を隠さなかった。【澤俊太郎、福島英博、昆野淳、田中龍士】

 「何とも言えない不気味な音がした。今まで聞いたことのない響きだった」

 同町富里地区の農業、渡辺敏一さん(64)は、地震発生直後に周囲で地響きがしたと振り返る。裏山が大きくえぐれ、隣家の叔父の家が押し流された。幸い自宅は無事で妻、母にけがはなく、叔父宅も無人だったが、「ちょっとずれたら私たちもどうなっていたか」と顔をこわばらせる。

 桜丘地区の農家、紺屋秀夫さん(75)は自宅で就寝中、強い揺れに見舞われた。立ち上がることができないほどで、妻と床をはって家の外へ逃げ出してまもなく、崩れた裏山から流れ出てきた土砂で家が潰された。間一髪で命は助かったものの「まさか自分の家がこうなるとは……」と意気消沈していた。

 同町によると、吉野、富里、高丘、幌内の各地区で土砂崩れの被害が甚大で、多数の安否不明者が出ている。吉野地区の道道沿いでは山の中腹から軒並み土砂崩れが発生。6日午前に土砂崩れの現場近くへ入った救助関係者は「吉野地区を中心に集落の跡形がほとんどないくらい壊滅的な土砂被害を受けていた」と話す。吉野地区に入る手前の道道も土砂で埋まり、午後2時過ぎに救急車両が通れるようになったが、大型車両は入れず救助活動は難航している。

 富里地区では、60代男性が住む家が土砂崩れで倒壊。隣に住む親戚の女性(59)が救出活動を見守っていた。男性の安否は不明だ。「地震の揺れがあまりにも大きく、家具などが倒れる音などに気を取られ、土砂が崩れる音は聞こえなかったのではないか。つい先日も台風の農作物被害などがないか、お互いに『大丈夫か』と声を掛け合ったりしていたのに」と声を落とした。

 苫小牧市の女性(84)は、朝日地区に住む兄夫婦と連絡が取れないという。「『家が潰れている』と(近隣住民から)連絡を受け、孫の車で慌てて駆け付けた。兄はおっとりして優しく、仲の良い夫婦なのに……」と涙を時折ぬぐっていた。

 町が開設した町内7カ所の避難所には、6日午後8時半現在で計約920人が避難。町役場近くにある町総合福祉センターに設けられた避難所には、約490人が身を寄せた。同町のパート、三谷敦子さん(60)は「避難所の生活も先が見えないが、まだ余震はあるし、また強い揺れがあると建物が崩れるかもしれないので危険だと思う。水が使えず、家の中の片付けをしようにも、思うようにいかないだろう」と話した。

 同センターでは6日夕、陸上自衛隊による給水支援とボランティアによる炊きだしが始まった。給水タンクの前には、町民数百人が両手にプラスチック容器などを持参して列を作り、順番を待った。陸自によると、タンクに補充する水は千歳市などから搬送しているが、交通事情が悪く、スムーズに運べないという。最前列にいた40代女性は「1時間ぐらい待ちましたが、仕方がない。命の水ですから」と話した。

 厚真町本郷の公民館「本郷マナビィハウス」には6日午前、近くの障害者支援施設「厚真リハビリセンター」の入所者47人が職員と共に一時避難した。

 入所者は食事や入浴など日常生活に介助が必要な20~92歳の重度の身体障害者。施設1階にある重油給湯器(ボイラー)やプロパンガスのボンベが倒れ、火災の危険を感じたことから避難した。駐車場も陥没し、窓ガラスも割れるなどして利用は困難という。しかし公民館は障害者施設とは異なり、車いすの利用者らには適しておらず、ベッドや食事用のテーブルなども足りない。胃から直接栄養を摂取する「胃ろう」の必要な入所者もいる。

 同センター支援課の藤田智之課長補佐(44)は「施設は復旧できない状況。公民館は水もなく衛生状態を保てず、ここにいられるのも数日間が限度。受け入れ先を探しているが、見つかるか不安だ」と吐露した。

救助活動続く

 3人が死亡、4人が心肺停止で見つかり、28人が安否不明となっている厚真町では、山の斜面が崩れた現場で救助活動が続いた。

 午後9時半ごろ、投光器が点々と置かれ、警察官や自衛隊員が交代で黙々と家のがれきが混ざった土砂をスコップで掘り起こしていた。隊員らが身に着けたライトの光が暗闇の中で揺れていた。

 道などによると、救助活動は夜通し行われる予定で、7日午前6時からは付近の道路を交通規制し、多くの自衛隊員が救助活動にあたるという。

 厚真町のホームページによると、同町は人口約4670人。太平洋に面した農村地帯で、ケーキやジャム、果実酒の材料となるハスカップの栽培や、サーフィンの人気スポットで知られる。【片平知宏、馬渕晶子】

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