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強制不妊手術

交際男性の願い無視 旧厚生省

男性について「優生保護法第5条第2項に定める『関係者』には含まれないものと解する」と記載した国からの回答文=仙台市で2018年8月21日、遠藤大志撮影

 旧優生保護法下の1960年、強制不妊手術の決定を受けた岩手県の女性と交際していた男性が、女性との結婚を前提に手術しないよう求めた。2人は当時ともに20歳で、岩手県から男性の意見を聞くべきか問い合わせを受けた旧厚生省は、「(意見を聞く)関係者ではない」と回答し、他の都道府県にも同じ内容の通知を送っていた。女性が実際に手術されたかは分かっていないが、男性の願いは無視されていた。

 通知文は、保管していた宮城県が厚生労働省による今回の全国調査を受けて提出。一方、岩手県にはこの男女に関する記録は見つかっていないという。

 毎日新聞の請求で開示された文書によると、通知は60年10月、岩手県厚生部長が旧厚生省に送った照会文「優生保護法に関する疑義について」への国側の回答が記されている。

 照会文には「精神薄弱」(当時の病名)を理由に施設に入所していた女性について、「結婚の意思のある」男性が手術に「反対の意向を強く示している」と記述。旧法が定めた「関係者」として「(手術についての)意見を聞くべきかどうか」見解をただした。これに対し、旧厚生省は翌11月、岩手県知事に「(男性は)関係者には含まれないものと解する」と回答。さらに同省は「例規」として、岩手の男女のケースを記し、都道府県に同じ対応を取るよう求める通知を送った。

 旧法では都道府県の審査会が手術実施を決めた場合、「申請者及び関係者の意見をきいて手術を行うべき医師を指定する」と規定。しかし、厚労省母子保健課は「(意見聴取は)強制手術の決定に影響を及ぼすものではなかった」と語る。国の統計では、岩手県では284人が強制手術を受けたが、手術記録や国からの通達文など県内の実態を示す関連文書は見つかっていない。【遠藤大志】

当事者の実態、想像を

 旧法の人権侵害に心を痛めている作家、甘糟りり子さんは「100人の平均値よりも、1人の物語が多くを知る手がかりになる」と語り、厚労省が調査結果として示した数字の向こうにある「当事者たちの実態に想像力を働かせてほしい」と呼び掛ける。

 旧法の存在を報道で知ったとき、現代の話とは思えなかった。国が「産む、産まない」を強制し、人を選別する考え方が恐ろしい。

 岩手の男女をめぐる記録もそうだ。男性が結婚を望んでいたなら手術に反対するのは当然だ。この2人がその後どうなったか知るすべはないが、私たちは人権を否定された人たちにもっと想像力を働かせる必要がある。

 国会議員が最近、性的少数者を「生産性がない」と否定した。過去から何も学ばなければ、社会は恐ろしい時代に簡単に戻ってしまう気がしてならない。(談)

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