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北海道震度7

無情の土砂、絆断つ 家族アルバム残され

滝本芳子さんとみられる女性が見つかった現場から沈痛な表情で引き揚げる息子の文夫さん(右端)ら親族=北海道厚真町で2018年9月7日午後2時22分、和田大典撮影

 最大震度7に襲われた北海道厚真町。山の斜面を崩落させた激震から1日が過ぎた7日、土砂の中から冷たくなった住民らが運び出された。生まれ育った自宅と肉親を一度に失った人々は、「生きていて」との願いを砕かれ、言葉を失った。町一帯では夕方から雨が降り出し、安否不明者の捜索現場では生存率が急激に下がる「72時間」が迫る中、救助関係者や家族らが焦りの色を濃くしていた。【川上珠実、片平知宏、畠山嵩】

     ●中村さん

     厚真町職員の中村真吾さん(42)は7日午前、町内の安置所で同町富里の父初雄さん(67)、母百合子さん(65)の遺体と対面した。「『うそでしょ。夢だよね』と言ってしまった。早すぎる」。言葉を詰まらせた。

     中村さんは地震発生直後、町北部を見回った。山肌が削れ、土砂で道路が寸断されていた。「尋常じゃない土砂崩れだ」。明るくなり、農道を通って両親と祖母が暮らす実家に向かった。「少しでも屋根が見えればと思ったけれど……」。屋根は全く見えなかった。

     6日午後7時ごろ、家族のアルバムが土砂の中から見つかった。自身の子どものころの写真もあった。「温かい家庭ですね」。捜索に当たっていた自衛隊員が声をかけてくれた。さらに約3時間半後、アルバムがあった物置の隣の寝室跡から、父と母が相次いで見つかった。「アルバムのおかげで2人の場所を見つけられたのかな」。中村さんは言った。

     父は3年前に病気になるまで長年、稲作で家族を育ててくれた。「農家らしい頑固者で、これだと決めたらやり通す尊敬できる人。母は誰にでも優しい、思いやりのある人だった」と振り返った。

     だが、祖母は見つかっていない。「ばあちゃんには生きていてほしい。いっぺんに3人は多すぎる」。涙ながらに声を絞り出した。

     ●滝本さん

     高校1年の滝本舞樺(まいか)さん(16)と父の農業、卓也さん(39)は6日夜から7日未明にかけて相次いで遺体で見つかった。

     舞樺さんの大叔父の文夫さん(67)によると、舞樺さんは他に曽祖母の芳子さん(95)、高校3年の兄天舞(てんま)さん(17)と暮らしていた。曽祖母の面倒を見るのを手伝ったり、ご飯を作ったりして「とても優しい子だった」。音楽が好きで、中学では吹奏楽部でフルートを吹いていた。

     卓也さんは5年ほど前から農業を始め、文夫さんも収穫を手伝った。「ようやく良い米を作れるようになってきたばかりだったのに」と声を震わせた。

     舞樺さんと天舞さんは2階、卓也さんと芳子さんは1階で寝ていた。天舞さんは、土砂崩れ直後に部屋の壁にできた隙間(すきま)から田んぼに逃げ、足を骨折したが助かった。

     7日は芳子さんの捜索が続けられ、午後2時過ぎに芳子さんとみられる女性が心肺停止の状態で発見された。「おふくろはこの土地に来て70~80年。思い出深い土地なので、ここで死ねて本望だったのかもしれない」。文夫さんは自らに言い聞かせるように話した。

    避難者「余震で寝付けず」

     北海道厚真町では7日、人口の2割強に当たる約1100人の住民たちが町内7カ所の避難所に身を寄せた。それぞれの避難所では過去の災害などの教訓をもとに、小さな子どものいる家族に専用スペースを用意するなど被災者の立場に立った工夫が見られた。

     約500人が一夜を明かした町総合福祉センターの避難所。7日朝、避難した住民たちは毛布などの上でぐったりとした様子で横になったり、身を寄せ合って話し合ったりしていた。宮副雅美さん(48)は「昨夜は余震で寝付けなかった。目が不自由で、夜中のトイレや緊急時の階段の上り下りなどに不安を感じている」と疲れ果てた様子だ。

     一方、同センターは宿泊エリアが1、2階で三つに分けられ、そのうちの一つは乳幼児がいる家族に優先的に割り振られた。

     生後6カ月の男児を抱いた母親(26)は「赤ちゃんの泣き声などで気を使うから避難生活は不安でした。でも、ここは同じ境遇の人が多いので非常に助かっています」と話した。【澤俊太郎、北山夏帆】

    地震で大きくゆがんだJR日高線のレールの線路=北海道むかわ町の浜田浦-鵡川間で、JR北海道提供

    雨の中、懸命の捜索

     7日午後、安否不明者がいまだ19人いる厚真町では雨脚が強まる中、余震のたびに中断しながらも懸命の捜索活動が続いた。同町の吉野地区では警察は10~15人ずつのグループが交代しながら作業を続け、自衛隊員たちも草木の混じった土砂をスコップで黙々と掘り進めた。

     「退避、退避!」。大きな余震があるたび、笛が鳴り響き、捜索隊はスコップを置いたまま現場を離れた。揺れが収まるとすぐに戻り、作業を続けた。【一宮俊介】

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