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余録

外交会合を政治的事情で欠席するときの口実となる仮病を…

 外交会合を政治的事情で欠席するときの口実となる仮病を「外交的病気(diplomatic illness)」という。外交辞令もそうだが、物事に外交という言葉がつくと、とたんに虚実入り組んだ模様に彩られる▲同じように「外交事件」とは、常識的な外交行動からの逸脱、たとえば首相や外相の失言などから生まれる外交的結果をいう(矢田部厚彦(やたべ・あつひこ)著「職業としての外交官」)。常識外れの行動も、実は外交的効果を狙った故意が多いようだ▲ならばこれも「事件」だろう。プーチン露大統領が公開の会議で安倍晋三(あべ・しんぞう)首相に「一切の前提条件なしに年内に平和条約を締結しよう」と呼びかけた一件である。言葉を真に受ければ、「今、この案を思いついた」という突発事件だ▲今さら何だが、北方四島の帰属問題を解決して平和条約を結ぶのが日本政府の基本方針である。首相は領土交渉打開にむけ、経済協力をテコにしてプーチン氏と会談を重ねた。だが、その相手が突如打ち上げた平和条約先行論だった▲中国の習近平(しゅうきんぺい)氏も見守る中、安倍首相の「今までのアプローチを変える」という言葉に、「そうしよう!」とプーチン氏が切り返した提案である。いぶかしいのは、その場の安倍首相が戸惑いの笑みの他に一言も返さなかったことだ▲首相が「戦後外交の総決算」なる看板を掲げてほどなく起こった外交事件だ。さて事件の仕掛け人は何をどう狙っての所業だろう。どうあれ平和条約交渉のイニシアチブは奪われたままにしない方がいい。

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