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自民総裁選

慢心する政権党「多数万能ではいけない」

 途切れ途切れで見せ場に乏しい自民党のトップ選びが、早くも後半戦に入ろうとしている。

 すでに平成の最長記録を更新中の安倍晋三政権である。それをさらに3年延長というのだから「異次元の選択」にほかならない。

 ところが、さしたる総括もなく、自民議員の8割強が草木のように安倍氏の3選支持になびくのはどういうことか。他方、本紙の世論調査で安倍3選に肯定的な回答が3割にとどまっているのはなぜなのか。

 原因の一つに、平成期に入って進められた政治改革がある。

 日本の首相は、国会の多数派から選ばれて行政権を握る。ただし、権力の本当の生みの親は、自らの代表として議員を選んだ国民だ。

 平成の改革はこの仕組みにコントラストをつけた。勝者総取りの小選挙区制導入と、首相官邸機能の強化という2本柱によって、多数党の勢力は人為的に増幅され、そのトップにはより巨大な権力が集中した。「安倍1強」はそのたまものである。

 見過ごせないのは、今の自民党に人工的に膨らんだ権力だという自覚が薄れ、多数決こそ民主主義という慢心が充満していることだ。党内には「安倍批判は許さない」という息苦しい空気すら漂っている。

 政治の目的は公共的な課題について結論を出すことだ。それはあれもこれもというわけにはいかない。何かを選べば何かが振り落とされる。

 しかし、この選択を多数決にのみ委ねると、少数意見は常に無視され社会は結論を共有できなくなる。だからこそ、価値観の違いを尊重し合い、「よりまし」な合意を生み出すのが民主制というものだろう。

 「見たいものしか見ない」「聞きたいことしか聞かない」といったネット社会の現象が拍車をかける。その現象は、一部のメディアを経て政界にまで及んできている。

 フィルターバブルと呼ばれるこうした風潮は、共通の言論空間を壊し、論争そのものの成立を阻む。スマートフォンの急速な普及は安倍政権の再登場期と重なる。「(性的少数者は)生産性がない」「マスコミを懲らしめる」など自民党議員の非常識な言動が目立つようになったのは偶然ではなかろう。

 多数決万能とフィルターバブルの思考とが合体すると、政治は社会の合意を形作るのではなく、逆に共同体を引き裂く作用を持ってしまう。

 日本の置かれた状況は厳しい。国際秩序は揺れ動き、急速な人口減少が待ち受ける。憲法も重要だが、それで解決できるものではない。

 困難な時代だからこそ、リーダーは懐の深さが求められる。親安倍も反安倍も、日本という共同体で暮らす主権者の声である。【論説委員長・古賀攻】

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